表面処理の種類と選択 (「溶融亜鉛めっき」、「電気亜鉛めっき」 参照)  HOME 技術資料室 技術用語
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 表面処理鋼板の製造方法として一般に行われているのは、下図に示す溶融メッキと電気メッキです。溶融メッキは鋼板を解けたメッキ金属槽の中をくぐらせてメッキする方法であり、電気メッキはメッキ金属を溶かした溶液の中に電極をおいて鋼板を通しながら電気的にメッキする方法で、それぞれに得失があるので、用途に応じた使い分けが必要です。

1.メッキ設備の概要

2. 製品品質の特徴
溶融メッキ鋼板 電気メッキ鋼板




目付量 両面合計で60~600g/m2 片面で10~60g/m2
差厚メッキ 製造が困難 表裏の目付を独立に変えられる
表面外観 亜鉛の場合スパングルの大きさが3種類(レグラー・ミニマム・ゼロ) 亜鉛のスパングルは無く、均一で美麗
耐蝕性 目付が厚いため耐蝕性に優れ、屋外使用に向く 目付が薄いので室内用又は塗装前提の屋外使用


原版 メッキライン内の連続焼鈍が前提のため材質はやや限定 熱延鋼板・冷延鋼板製品をメッキするため材質の選択肢大
メッキ層 浸漬メッキのため密着性は原板の影響を受けやすい 電気的メッキのため合金層が無く、メッキ密着性も高い
最近の
技術進歩
材質向上、亜鉛-地鉄の合金化、表面の電気的改質などで飛躍的な改善がある 複数金属での合金メッキが開発され薄目付での耐蝕性向上がある

 
 
4.用途別適用例
         製品
用途
電気
めっき
電気合金
めっき
溶融亜鉛めっき 亜鉛アルミ合金
亜鉛鉄板 非合金 合金 5%-Al 55%-Al

外装 屋根
外壁
雨戸
雨樋
サッシ
シャッター
金属瓦
内装 壁・間仕切
設備
構造
ダクト
デッキプレート
軽量形鋼
足場パイプ
家具
家電
鋼製家具
衣裳箱
エアコン・電気機器


車体 外板
足回り
内装
電装 エアークリーナーケース
部品 ガソリンタンク
マフラー



鉄道
車両
内装パネル
天井
船舶 内装
ダクト
コンテナー



厨房 冷蔵庫外装
キッチンセット
食洗器
空調 石油ストーブ外装
石油ストーブタンク
クーラー外装
動力
通信
照明機器
配電盤
洗濯機
ステレオ
テレビ
冷凍ショーケース
自動販売機

ガードレール
コルゲートパイプ
防雪シェード
標識
防音壁

サイロ
畜舎
ビニールハウスパイプ
穀物倉庫


ドラム缶
ソーラーシステム

5.亜鉛メッキ鋼板選択のヒント (注)めっき後処理に関しては「めっき後処理」参照
亜鉛メッキ鋼板の中には、メッキ方法、亜鉛付着量、後処理の違いなど、種類の違う様々な種類がありますが、顧客の用途や目的に応じて最適なものを推薦する必要があります。下記は選択のヒントです。
 亜鉛付着量が多いと耐蝕性は良くなりますが、反面高価になり、また加工性や溶接性など加工面でも不利になりがちです。

適材適品種の観点から、素材の適正選択のコツは、先ず、
(イ) 使用環境…………屋外か屋内か
(ロ) 使用方法…………塗装か無塗装か
(ハ) 用途に要求される条件…………耐久性、加工性、溶接性

これらの条件の兼ね合いから、最も経済的な素材を選択する必要があります。
 一般的に溶融亜鉛メッキは目付が厚く耐食性があるため、屋外での使用に向いており、これに対し電気亜鉛メッキは、目付が薄く耐食性はやや劣りますが、外観が均一で平滑なため、屋内の家電などでよく使われています。

 めっきの種類のほかに、下記に示すように、更に性能を改善するための色々な後処理があり、これも用途に応じた選択が必要となります。
 1) リン酸塩処理
 これは、亜鉛の金属面に不溶性金属リン酸塩からなる安定した堅固な皮膜を生成させ、これによって外気の浸透を防ぎ、亜鉛面を保護しようというもので、古くから簡易な防食法として知られています。
 この生成皮膜は結晶状でしかも表面が粗くなるため、塗料の密着性が良く、塗装下地として適しています。
このことから、最近では防食の目的より、むしろ塗料の密着性を上げて塗装後の耐蝕性を増大させる目的で使われる場合が多く、主として電気亜鉛メッキ鋼板に多く使われています。

 2) クロメート(クロム酸)処理
 亜鉛メッキ鋼板は無処理でも耐蝕性はありますが、条件によっては空気中の水分や炭酸ガス等と亜鉛が反応して白錆となることがあります。
 この白錆の発生を防止し、亜鉛メッキ鋼板の耐蝕性を高めるために色々な後処理が施されます。特に無塗装で使用される亜鉛メッキ鋼板には、従来クロメート処理が広く使用されて来ましたが、特に6価クロームは有害性があることから最近は次項のクロメートフリー処理が一般に使われるようになりました。

 3) クロメートフリー
 多くの亜鉛メッキ鋼板に処理されているクロメートは6価クロムを含有しますが、これが環境負荷化学物質とされ、使用削減から更に使用禁止への動きが日々強まっています。
 この様な要請を受けて、環境にやさしい材料として、クロメートを一切使用しない無公害のクロメートフリー亜鉛メッキ鋼板が開発されています。
 これは特殊皮膜処理を施すことによって、クロメート処理を代替したもので、耐蝕性、塗装性、導電性、等いずれもクロメート処理材と同等の性能を確保しています。
 この皮膜は多くの場合、極薄い樹脂皮膜であるためクロメート処理材と較べて、耐指紋性やプレス性が向上しています。

 4) 特殊処理
 ①亜鉛メッキ面の耐蝕性が極めて良好なもの、②塗装下地として極めて優秀な性能を持つもの、③溶接性の優れたもの、等各種の特殊処理品(後処理)が開発、商品化され、それぞれの特性を活かした用途に選定ができます。

 5) オイリング(塗油)
 オイリングは、古くから最も簡便な短期の防食法として、知られています。亜鉛メッキ鋼板の場合、加工工程での潤滑油塗布の手間を省くと共に、保管中の白錆発生防止を目的として塗油します。但し、塗装する場合には事前に脱脂する必要があるため、平板のまままたは曲げ加工程度で使用する家電や建材などにはオイリング材は向きません。自動車ボディーのようにプレス後に塗装するような場合には、プレス油が必要なので、脱脂⇒化成処理⇒塗装という工程をとらざるを得ずオイリングが有効です。
 6) 潤滑鋼板

 従来、主として弱電メーカーではプレス加工の為に塗油し、その後塗装前にフロンやトリクロロエタン等の有機化合物で脱脂していました。
 近年、これらの有機化合物がオゾン層を破壊することがわかり、地球環境保護の観点からこれらの有機化合物の使用ができなくなったため、代替策として無塗油でもプレス成形加工性に優れ、裸使用での耐蝕性や塗装印刷性にも優れた潤滑表面処理が開発されています。
 この処理は、クロメート処理を施した後、特殊な潤滑皮膜処理が行われています。

 7) 耐指紋性(UF鋼板)
 電気亜鉛メッキ鋼板にクロメート処理を施した後、特殊な有機複合皮膜処理を行ったもので、裸使用での耐蝕性と同時に、触っても指紋が付かないよう、耐指紋性を向上させた処理が行われています。
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