割れ窓理論 英語版       HOME 技術資料室 技術用語
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 「割れ窓(割られた窓)理論」とは、この言葉のとおり建物やビルの窓ガラスが割られたまま放置されていると、その建物は管理されていないと認識され、割られる窓ガラスは増えて行き、やがて建物やビル全体が荒廃し、それはさらに周辺地域全体が荒れていくという理屈です。
 つまり、「割れ窓理論」は、たった一枚の割れ窓の放置から起きる荒廃の始まりで、街は荒れて無秩序状態となり、犯罪は多発し、地域共同体を作っていた住民は街から逃げ出し街は崩壊するというものです。
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 米国の失敗は、小さな犯罪を見過ごしてきたことにあった。様々な都市で殺人が頻発したため、警察組織は街角で麻薬の密売が行われていても、それには目をつぶり、もっと重大な犯罪に力を集中させようという意識に支配されるようになっていた。

 これに対し、「割れ窓理論」では、社会をビルのようなものだと考える。窓が一つ壊されたビルを見て、「一つくらいならいいだろう」と放置しておけば、窓は次々に壊され、やがてはビル全体が瓦解してしまう。それと同じように、小さな犯罪を見過ごして、その都市を、自分の「しゃば」だと犯罪者に思わせてはならない。そう思わせてしまったら、より重大な犯罪が横行することになる−−。

 米国の警察財団は1972年、ニューアーク(ニュージャージー州)で「警察官の徒歩パトロール強化」を実施した。これが「割れ窓理論」の基調となった。

 この成果を調べたケリング博士は、警察官の徒歩パトロールには殺人や強盗など重大犯罪だけでなく、軽犯罪法違反の事犯もドンドン取り締まるという姿勢を見せたことで、地域住民に安心感を与え、住民が警察活動への信頼感を増す効果があることに気がついた。たった一枚の窓ガラスを割ったり、ビルの壁に落書きをするなど軽微な事犯でも、それらを見逃さないという警察があることで住民意識が変わったのだという。
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 このケリング博士の理論は、米政治学者ジェームズ・ウィルソン博士(米UCLAで公共政策講座)と共同でアトランテック・マンスリー誌に掲載されたが、それを実践的に採用したのが、ニューヨーク市のR・ジュリアーニ市長だった。

 ジュリアーニ市長は1994年1月、ニューヨーク市警察本部長にブラットン氏を任命し、「割れ窓理論」を採用してニューヨークの街角から「割れた窓」の一掃を図った。このために警察官5,000人を採用し、徹底した徒歩パトロールと軽微な犯罪の取締に入った。同時にニューヨーク迷惑防止条例の積極的な運用もはかった。

 ニューヨークのイメージは変わり、落書きで有名だった地下鉄は、今では綺麗な車体で24時間、安全な乗り物としてニューヨーク市民の足になっている。
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