転倒限界           HOME 技術資料室 技術用語
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1.転倒限界の意味
 幅の狭い穴横のコイルは外径に対して幅が狭いほど、転倒する危険性が高くなります。転倒する危険度を判断する指標として、コイル外径を幅で割った値 (右図のb/a) を「転倒限界」と言い、この値が大きくなるほど転倒しやすくなります。
 「転倒限界」は転倒しない限界ではなくて、異常な外力が加わらない限り一応転倒しにくいであろうという程度の目安です。
 右図 のように重心の位置が対角線を越えると転倒するので、この角度以上に傾く危険性がどの程度あるかで、「転倒限界」を決める必要があります。(「スリットコイルの起き上がり現象」参照) 
 どのような外力が加わるか、置場の傾斜がどの程度あるか、手作業で転がす作業があるか、などの環境条件の影響が大きいため、「転倒限界」を一律に決めることはできません。

 転倒限界を決める方法としては、これらの環境条件を勘案して、過去の事故の経験と感覚から決めるしかありません。

 鉄鋼メーカーではコンベヤー上での起動・停止、地震、構内トラック輸送時のカーブなどでの転倒などを考慮して 2.5〜3 程度に設定している場合が多いようですが、これをスリットコイルのハンドリング作業や置場にもそのまま適用できるかは改めての検討が必要です。


2.転倒限界の試案
 従って転倒限界を決める理論は無く、経験的な感覚で決めるしかありません。右図 は幅と高さの関係を図示したものですが、これから感覚的に 2.5〜3.0 程度が倒れにくい限界と考えておいたほうが良いと思われます。コイルセンターでは大半のスリットコイルの外径/幅の比が 3.0 以上と思われますので、スリットコイルは殆ど全量が転倒の危険があると考えるべきと思われます。

3.備考
1) 下図左 のように床面を転がす作業は非常に危険で、スリットコイルが転倒することによる災害が多く発生しています。特に紙巻作業時の転倒対策が必要です。

2) スリットコイル置場は下図右 のように転倒防止用の支柱を立てて、転倒のデノミ現象を避ける対策が必要です。
  
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