スリットコイルの起上がり現象   HOME 技術資料室 技術用語
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 幅狭のスリットコイルは穴横の状態で置くと倒れやすく、ドミノ現象を起こして災害を起こす危険があります。又、下右写真のように立てかけて置くのも、コイルを出し入れする場合や、傾ける角度によっては起き上がる危険があり、安全な方法とはいえません。下写真右端のような転倒防止支柱付の置台を使用する必要があります。
傾けておいた場合の角度と起き上がる現象の関係は以下の通りです。
 
1)  コイルにかかる力は右図に示すように、コイル自身の重力とそれに対する床からの反力だけです。
 コイルの重力は下記の断面図の中心(重心)にかかり、常に垂直下向きにかかります。
2)  このコイルを傾けてゆくと、床からの反力はコイルと接触しているエッジ部に移行します。
 @では重力と床からの反力は時計方向にコイルを回す力となり、コイルを起こそうとします。Aが中立でこれを超えてBになると逆に反時計方向に回す力となり、コイルを倒そうとします。

3)  この境界角度Aは右図のようにコイルの幅と外形の比率で決まります。Aの場合のコイルの傾き角度をφ度とすると、下記の関係が得られます。

    tanφ=W/D

 この式から、φ=tan-1(W/D) でφの角度が求められますが、この計算はパソコンが簡単にしてくれます。
 即ち、Excelを開いて⇒fx⇒数学/三角⇒ATANとクリックすると数値を記入する欄が現われるので、そこにW/Dの値をいれてOKボタンを押すと、角度がradという単位で示されます。この値に57.3を掛けると角度(°)になります。

 計算例を下表に示します。この角度以下ではコイルには立ち上がろうとする力が働きます。
従って、幅狭のスリットコイルを立て掛けて置く場合は下記の角度以上に傾けて置かないと、立ち上がる危険があります。

幅Wmm 外径Dmm W/D tan-1(W/D) 角度φ°
100 1,000 0.1 0.0097 5.71
1,500 0.0667 0.0666 3.81
200 1,000 0.2 0.1974 11.31
1,500 0.1333 0.1325 7.59
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