曲げ割れ  プレス加工」参照   HOME 技術資料室  技術用語
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 曲げ割れは特に厚手材に発生し、プレス割れトラブルと同様に、市場でしばしば経験する加工不良です。
 曲げ割れトラブルは、軟質材(30`級)や薄手材では余り発生しませんが、ハイテン材や厚手材になるとその危険性は高くなります。

1. 曲げ割れの発生原因
 曲げ割れの原因には、主として以下の4つが挙げられます。
  1)曲げ半径が厳し過ぎる (仕様不適合)
  2)材質が劣っている (材質不適合)
  3)曲げの方向が不適切 (方向不一致)
  4)切断面のバリが大きいか、あるいは曲げの外側に向いている(バリ不合)
  
2. 曲げ性の評価方法
 試験方法の詳細は、JIS Z 2248 金属材料曲げ試験方法に規定されており、鋼板の各規格には、機械的性質として「曲げ性」が規定されいます。
その内容は
      @ 曲げ角度、A内側半径、B試験片の幅
があります。

*曲げ角度:通常180°

*内側半径:通常板厚の倍数(r/t)
       (密着の場合は「0t」)

*試験片サイズ:t<3mmは3号、 t≧3mmは1号

*曲げ方向:圧延方向に対する曲げ方向 

*判定:曲げた外側に亀裂を生じてないこと

  
3. 曲げ割れの対策(下記の順番で検討する必要があります) 
1) 切断バリの方向と改善
 切断時発生するバリも曲げ性に敏感に影響します。これは曲げ加工の際にバリがノッチとなり、起点となって割れを伝播させるからです。
 バリの向きを変形代の大きな外側にするとかなり不利になりますので、バリは曲げの内側にくるようにする必要があります。
 これが難しい場合は、曲げ部のバリをグラインダー等で事前に除去すると効果があります。
 
2) 曲げ加工の方向による改善
 曲げ加工の方向と鋼板の圧延方向の間にはかなり関係があり、厳しい曲げ性能が要求される成形においては、この差はかなり顕著に現れます。
 即ち、板幅方向への曲げ(C曲げ)はかなり不利になります。それに比較して圧延方向への曲げ(L曲げ)は有利です。顧客での曲げ方向がどちらであるかを把握し、これを板取作業に反映させる必要があります。
  

 
3) 材料の規格仕様以上の厳しい曲げ半径の加工への対応
 一般論としては、規格にあった曲げ半径での加工になるよう、顧客に設計変更を依頼する必要があります。しかし、部品の寸法精度や見栄え等から曲げ半径を緩和することは難しい場合が多く、その際は鉄鋼メーカーと相談し、曲げ性に対する材質のグレードアップを検討する必要があります。
 
4) 曲げ性に影響する鋼の成分
 曲げ性と最も影響を与える鋼の要因は、鋼中に含まれる硫黄「S」元素です。鋼中の「S」を低減させると曲げ性能を向上させることが出来ます。
 製鋼工程での脱硫技術が発達した結果、コストを掛ければ硫黄分の低い鋼(低硫鋼)を生産することは可能です。曲げ性の要求レベルにもよりますが、[S]≦0.010%〜0.005%に特別管理をすれば曲げ割れ性はかなり解決すると考えられます。
  また、炭素[C]や珪素[Si]、マンガン[Mn]、更に鋼の結晶組織も絡んでくることもあるので、鉄鋼メーカーとの協働対応が必要です。
 いずれにせよ特別管理になり、価格が絡んできますので、営業判断が必要になります。   
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