コイル置き場でのクサビ(楔)の効果  HOME 技術資料室 技術用語
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 右図のように、固定していないクサビを用いてコイルを段積した場合、コイル B がコイル A の重量によって右に押されて転がるのを防止する力は、コイルB〜クサビ間の摩擦力とクサビ〜床面間の摩擦力の合計の力になります。 クサビがコイルと床の間に正確に挟まっていて、しかもクサビの接触面が荷重方向に直角になるといった理想状態でのクサビの効果を計算すると、以下のようになります。

 右図の場合、3つのコイル ABC が全く同じ重量と外径をもつと仮定すると、コイル A がコイル B を押す力は垂直方向に対し、30°傾いた方向になるので、摩擦力はそれぞれ以下のようになります。

(1)コイル〜クサビ間の摩擦力
 コイルとクサビの間にかかる力 F に両者間の摩擦係数 μ1 を掛けたものが、この間にかかる摩擦力 R1 になります。
    R1=F×μ1 (μ1:コイル B とクサビ間の摩擦係数)
 R1 の水平方向の分力 R1h がクサビを止めようとする力になるので、
    R1h=R1×cos30°=F×μ1×cos30°・・・@

又、R1 の垂直方向の分力 R1v は次項のクサビ〜床面の摩擦力を増加する働きに寄与します。
    R1v=R1×sin30°=F×μ1×sin30°

(2)クサビ〜床面間の摩擦力
 クサビ〜床面に掛かる力 F の水平方向の分力 Fh がクサビを横に滑らせようとする力になり、他方、垂直方向の分力 Fv とクサビ〜コイル間の摩擦力から来る分力 R1v の合計に摩擦係数 μ2 を掛けた力が、クサビを止めようとする力になります。 Fv=F×cos30° なので、クサビ〜床面の摩擦力 R2
    R2=(R1v+Fv)×μ2=(F×μ1×sin30°+F×cos30°)×μ2・・・・A

(3)クサビを動かそうとする力
 コイルAの重量から来るFの内水平方向の分力 Fh が、クサビを横に動かそうとする力になります。
    Fh=F×sin30°・・・・・・・・・・・・・B

(4)クサビに掛かる力の合計
    クサビを動かそうとする力=Fh・・・・・・・・・・・B
    クサビを止めようとする力=R1h+ R2・・・・・・・・・・・・・・@+A

 従って、R1h+R2>Fh であればコイル B の横滑りを防止することができます。
    F×μ1×cos30°+(F×μ1×sin30°+F×cos30°)×μ2>F×sin30°
μ1=μ2=μ とするとこの式は
    0.5×μ2+(0.866+0.866)μ−0.5>0 となり、
この式を解くと、μ>{−1.772+(1.7722−4×0.5×(-0.5)}1/2/(2×0.5)=
0.268

 即ち、
μ>0.268 となり、クサビと床との間の摩擦係数が 0.268 以上ないと、コイルを固定する効果がないことを意味します。
 木材同士の場合、摩擦係数は0.2〜0.5程度なので、理想状態では、クサビの効果は期待できそうですが、木製のクサビは損傷して形状や角度が正しく保ちにくい上に、コイルと床面の間に正しく押し込むことはかなり難しく、更に床面にゴミや油などがある場合には、摩擦係数は極端に低下しますので、実態の状況を考えると余り安全とはいえません。実際にクサビが滑ってコイルが転がり、建屋を壊した例が多数あります。


 横スキッドを縦スキッドに固定して、コイル 1 個ごとに置台の上に置くことが必須条件です。
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