コイルヤード         HOME 技術資料室 技術用語
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 コイルセンターでは幅広の母材コイルと幅狭にスリットした製品コイルがありそれぞれのヤードに保管されますが、各々異なった在庫の方法と注意が必要です。

<母材コイルヤード>
1.構造
 母材コイルヤードは通常数か月分のコイルを2〜3 段積して保管しますが、大重量のコイルが山積みされた状態では、クレーンの操作ミスや地震などの外力は無論、コイル自身の重量による下段コイルの変形等も荷崩れを起こす原因となり、大きな破壊力になります。地盤が水平になっていない場合は一層危険です。
コイルヤードにはこれらの危険を予防するために、下記の対策が必要です。
(1) コイルの重量による地盤沈下による床面の不均一化を防ぐために、床の基礎から充分補強しておく必要があります。平均的な床荷重としてはコイル3 段積の場合で10〜12 ton/m2程度になります。(9)項参照
杭無しの場合の床基礎例

(2) 山積みされたコイルは色々な原因で山崩れを起こす危険があるという前提で対策を考えておくべきです。それにはまずコイルが山崩れを起こさないような対策と同時に、山崩れしても人や設備に被害を及ぼさない配慮が必要です。
@最下段のコイルが動かないよう、スキッドは台座・横木を固定する。(6)参照
A万が一山崩れを起こしてもコイル置場内で止まるよう、コンクリート製やH型鋼製を使った強固なエンドストッパーを設置する。
?コイルが人及び生産設備のある方向に転がらないような置き方をする。
(3) コイルの形状は様々で、中には外径の小さなものや巻がゆるいものもある可能性があります。このようなコイルは最上段に積まないと右図のように上のコイルの重みでつぶされて、上のコイルが転落する危険があります。このような場合はエンドストッパーで止めることも難しいので、コイルの積み方の作業規則を明確にしておく必要があります。
(4) コイルの山崩れは最下段のコイルが動きだすことが最も多い要因です。下図の赤いコイルを搬出した場合、両サイドのコイルは抜けた空間に寄ろうとするため、しっかり固定されていないと山崩れをおこします。
クサビ(楔)でコイルを止める方式では、クサビをコイル間の狭い空間に確実に挿入することが難しい上に、仮に正しく装着された場合でも、クサビではコイルを固定する力が弱く、危険です。 段積みする場合は最下段は(6)のような固定スキッドにすべきです。(「クサビの限界」「段積みコイルに掛かる荷重」参照)
 
(5) コイルを端から詰めて並べて置いて行くと、多少の外径の差によって下図のような「浮きコイル」が発生し、隣接コイルを転がそうとする力が一層大きく働くために危険です。最下段のコイルは適正な間隔で固定されたスキッド上に置く必要があります。

(6) コイル置台は右図のように、列毎の縦スキッドと、コイル 1 個に対して 2 本の固定した横スキッドを設置する必要があります。横スキッドの間隔は、コイル外径で層別してゾーンを分け、各ゾーンの外径範囲に合った間隔で固定します。
 コイル外径による層別の方法としては、一定期間での個々のコイルの重量と板幅の実績データーからコイル外径を下記の計算式を使ってエクセルで計算させて分布をみて、2〜3ゾーンに分けます。(詳しくは『コイル外径の計算」参照)
 
 コイル外径mm={4×109×コイル重量ton/(3.14×板幅mm×7.85)+(コイル内径mm)2}1/2
 
 横スキッドは「段積みコイルに掛かる荷重」 に示すように、コイルから受ける荷重に耐えるだけの強度が必要ですが、そのほかに結束バンドの圧痕や異物によるデンツを防ぐための配慮も必要で、木製のほかに鉄骨にプラスチック又はやゴム敷きのものまで色々使われており、価格もさまざまです。

 
(7) 各社コイルスキッドの例(カタログ(pdf)参照)
横スキッドには下写真の様に色々な種類のものが考案されており、コストもまちまちです。各工場の事情に合ったものを探求する必要があります。
(8) クレーンが地上操作者によるペンダントまたは無線で操作する場合、右図の様に操作者の作業通路を確保する必要があり、コイル置き場としてのスペース効率は落ちます。又、クレーンの走行速度も63 mpm 以下に押さえられるために作業速度も遅くなります。
クレーンにキャビンをつけて機上操作にすると地上の作業通路が減らせるのと、クレーンの走行速度が最高100mpm 迄上げられるので、作業効率は上がります。さらに次項のような在庫管理も取り入れることができます。
クレーンの稼働率が80% 以上になると機上からの操作が必要になるようです。
(9) コイルヤードの置場能力シミュレーション例
地上操作の場合
(10) 高く積み上げた段積コイルを人力で探すのは、命綱も付けられず非常に危険です。コイルの在庫管理は、コンピューターを使って立体的に把握する技術が開発されています。(右図)

2.天井クレーン&ホイスト・・「天井クレーン」参照
 天井クレーンには地上からの有線または無線操縦するものと、クレーン上の運転席(キャビン)で操作するものがあり、特に原コイルヤードのように稼働率が高い場合は機上操作が有利です。

3.吊具・・・「吊具」参照
 色々な種類があり、適正な選択が必要です。鉄鋼製品は重量が大きいので、十分強度のある設計がされた吊具を選択する必要があり、特に荷重を掛けるたびに金属疲労が徐々に進んで弱体化してくるので、設計段階から考慮されたものを選択する必要があります。

 吊具を更新する場合などには、右図のようにクレーンの揚程とコイルの積載高さを考慮しておく必要があります。

スリットコイル置場
  幅狭のスリットコイルは穴横の状態で置くと倒れやすく、ドミノ現象を起こす危険があります。又、下写真中央のように傾けて置くのも、コイルを出し入れする場合や、傾ける角度によっては起き上がる危険があり、安全な方法とはいえません。下写真右端のような支柱つきのスキッドを使用する必要があります。

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