企業の危機管理 (日経産業新聞 1993 年 2月17日)  HOME 技術資料室 技術用語
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 下記の話は実際にアメリカで起こった企業危機とそれへの対応のまずさからくる企業危機の例です。
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 バクテリアに汚染されたハンバーガーを食べた幼児が死亡、400 人以上が食中毒になるという事件が米国で起き、米大手ハンバーガーチェーン、“ジャック・イン・ザ・ボックス”が売り上げ激減に直面した。「大騒ぎするほどの話ではない」という経営者の当初の判断ミスがその後の対策を遅らせる原因になったと言われる。企業の危機管理はどうあるべきか。今回のハンバーガー食中毒事件からその教訓を引き出してみる。
1月3日 最初の患者が腹痛の為シアトルの病院に収容され、ワシントン州内で60人以上が同様の症状を訴えている事が判明。
1月18日 同州保険局は患者の大半が“ジャック・イン・ザ・ボックス”でハンバーガーを食べたと示唆。  同社はワシントン州内の店舗でハンバーガーの販売を一次停止した。しかし、その発表の席で副社長は「限られた範囲での事件に過ぎない」と強調。事態を見誤った。・・・教訓-1 「迅速に対応せよ」
1月19日 同副社長は「政府の衛生管理基準を完全に満たしており、当店での飲食になんの心配もいらない」と強気発言を繰り返した。
1月21日 同社はミンチの調理温度・時間を定めた州の衛生基準に違反していたことを渋々認める羽目に陥った。不正直さがあだとなって、“ジャック・イン・ザ・ボックス”は顧客の信頼を大きく損ねた。・・・教訓-2 「正直たれ」
 2歳の子供が死亡。アイダホなど隣接州にも事件が飛火し、ようやく事態を深刻に受け止めた経営トップが次にしたことは「責任の転嫁」だった。社長は「ミンチの処理段階で汚染した可能性がある」として、納入業者“ボンズ”の名をあげた。“ボンズ”は「ぬれぎぬだ」と反論、「屠殺段階でバクテリアが入り込んだ」と主張した。
 新聞やテレビがこの泥仕合を大きく報道。この結果、一番損をしたのは“ジャック・イン・ザ・ボックス”だったというのが企業危機管理専門家の一致した見方だ。店頭で悲劇が起きたのだから、まず謝罪すべきだった。責任の所在は法的に争うことで、被害者救済とは別問題だ・
教訓-3 「責任転嫁するな」
1月22日 “ジャック・イン・ザ・ボックス”は受信人払いの「800番電話」を設置、消費者への情報開示に努めた。しかしそれも州保健局が「“ジャック・イン・ザ・ボックス”のバンバーガーが食中毒源」と指摘してから4日後。「迅速な対応」には程遠かった。・・・教訓-4 「情報公開を怠るな」
1月31日 “ジャック・イン・ザ・ボックス”はようやく被害者の医療費負担の方針を発表
 ハンバーガー食中毒騒ぎで「“ジャック・イン・ザ・ボックス”の客が30%減った」といわれる。この危機からどう立ち直るか。 “ジャック・イン・ザ・ボックス”はテレビを使った通常の販促コマーシャル放送をやめ、J.グッドオール会が悲痛な表情で「皆様の信頼を回復するために全力を尽くします」と語っているビデオを流し始めた。

 また「企業の社会的責任」の一貫として、腎臓病研究基金に10万ドルの寄付を決めた。今度の食中毒の原因になったバクテリアは腎臓病を起こす可能性があり、亡くなった幼児も腎臓障害が死因になったからだ。
 しかし、こうした対応にもまして大切なのは「客に直接接する店頭での対応。店員が食品衛生管理について十分な知識を持ち、時間をかけて客の信頼を勝ち取ることが第一だ」ブラッグマン代表は言い切っている。

経営コンサルティング会社“ブラッグマン・ニーマン・カファレリ”のH・ブラックマン代表は企業の危機管理として、下記4点がポイントと言っています。
1.迅速な対応
2.情報の公開
3.正直であること
4.責任転嫁するな 
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