不適合処理と是正処置      HOME 技術資料室  技術用語
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 「不適合処理」とは、不適合の状態を除去すること
 「是正処置」とは、不適合の状態となる
原因を除去すること
であり、要求される(実行する)内容は大きく異なります(混同している対応が多い)。

 不適合処理と是正処置とは連携(連続)して検討・処置・対策が取られることが多く、不適合処理で終わってしまっているケースが非常に多いのが実体です。

 不適合処理は、言わば「モグラたたき」で、その時だけ(或いはその物だけ)の処理で終わってしまうので、暫くするとまた再発してしまいます。この不適合処理に多くの時間や人手(更にはクレーム金額)が取られてしまうのは、拠点運営上での大きな損失であす。

 そこで更に深堀する是正処置としては、
再発防止のために、不適合の原因を除去する処置であり、「モグラ全滅」作戦です。
 
 不適合処理から是正処置に如何に繋げるかが重要で、経営管理チームはここに力点を置いて、積極的に原因工程(プロセス)に介在して行く必要があります。

 このことは何もISOの認証に限らず、トラブル対応には必須なことです。その原因の根を探し、これを根絶することが非常に重要ですが、この活動にISO(QMS)は成果が上がるように手法が組み込まれています。
これを有効活用し、ISO認証取得の一つの大きな成果に結び付けないとせっかく苦労して活動しても無駄になります。

 是正処置と言うと、すぐ内部監査や審査員の指摘を連想しますが、そうではなく、日常の活動の中から随時、
是正処置の手順書に従って、このシステムを起動(有効活用)させる必要があります。

 拠点内で発生するいろんな不適合、顧客で発生する不適合製品(クレーム、コンプレーン)等に着目し(「
プロセスの監視及び測定」から検出される不適合)、この中から本当に必要なもの(重要課題)を是正処置に繋げれば良いわけです。

 不適合に対しては処理しなければなりませんが、これを総て是正処置まで繋ぐ必要もないと思われます。是正処置まで繋ぐ必要があるかどうかの正確な判断を、先ず経営管理チームが行う必要があります。

 是正処置とは、そう容易なことではなく、関係者の理解と協力が必須です。
 以下にISO規格の意図するところを少し解説します。

(規格要求事項)8.5.2 是正処置
1)組織は、再発防止のため、不適合の原因を除去する処置をとること

2)是正処置は、発見された不適合のもつ影響に見合うものであること
(補足) 発生した不適合に対して、そのリスクの大きさを評価し、重要なものから是正処置に取りかかる。例えば、リスク評価をA,B,Cのランクに分けて取り組むとか。

3)次の事項に関する要求事項を規定するために“文書化された手順”を確立すること
(補足) 是正処置に関する手順書は規格要求の一つです。数ある必要な業務手順のうち、重要なものは文書にすることが義務付けられています。作成された「是正処置手順書」に従って仕事を進めることが必要です。実態との乖離があれば、即、文書改訂をする必要があります。
 a)不適合(顧客からの苦情を含む)の内容確認
 b)不適合の原因の特定
(補足) 是正処置のキーポイントとして、通常は原因は決して一つではなく、多くの原因が絡み合って不適合が発生していると見るべきです。「なぜ、なぜ、なぜ」と3回位深堀りする必要があります。その過程で「真の原因」「根本的原因を」突き止めてゆき、安易に原因を結論付けるのは禁物です。
 c)不適合の再発防止を確実にするための処置の必要性の評価
(補足) 不適合の中には是正処置を取る必要の無いものも含まれる場合があるので、本当に是正処置が必要なものはどれかを検討して選択します。(選択の手順と判断基準を決めておく必要があります)
 d)必要な処置の決定及び実施
(補足) b)とc)の検討結果、選択された不適合に対し、複数の原因及び複数の対策が存在する場合が通常です。関係者で有効な具体的対策を決定し、それを実施に移し、場合によっては経営資源の投入も必要です。これには2)でのリスク評価の結果との整合性をみる必要もあります。
 e)とった処置の結果の記録(4.2.4参照)
(補足) 是正処置としてやって来たことの要点を様式「是正処置要求書/回答書」に纏めることが大切です。
 f)是正処置において実施した活動のレビュー
(補足) 対策内容のフォローアップとして、実行に移した対策が適切・妥当・有効であるかを振り返ることが大切です(効果の確認)。成果が確認できれば、関連する文書改訂し、対策を確実なものにすること、更にこの文書を使って関係者を教育・訓練し、周知・徹底を図る必要があります。

と規格には述べられています。

以上のことを、例えば、下記のように整理するとわかりやすいでしょう。(関係者で討議し、模造紙に書く)
 
是正処置への原因解析と対策案の検討(例)
  対策案の検討
対策A 対策B 対策C 対策D




原因1
原因2 ×
原因3 ×
原因4 ×
原因5 ×
原因6 ×
原因7 ×
対策概算費用 10万円 30万円 50万円 100万円
予想効果 ○:有効 □: △: ×:余り期待できない                                             
 リスク評価の結果或いは真の原因追求への限界から、完璧なる是正処置は難しいとの提言もありますが、ここを見極めた上での是正処置による対策をメンバーで共有化し、更なる継続的改善に繋げることが重要です。

註:ISO9000:2000の中で、以下のように用語が定義されています。
不適合 要求事項を満たしていないこと
要求事項 明示されている、通常暗黙のうちに了解されている、又は義務として要求されているニーズ若しくは期待
是正処置 検出された不適合又はその他の検出された望ましくない状況の原因を除去するための処置

<ヒューマンエラーについて>
 顧客クレーム及び社内不適合の発生原因がヒューマンエラーであった場合、その原因が発生させた本人にあるとする事例が多く見受けられます。しかし、発生した不適合の根本原因が、はたして本人だけにあるとして良いのか?

例えば、サイズ間違いの顧客クレームは、たまたま処理していたその人にすべての原因があるのだろうか?

例えばその原因が、その人への教育不足にあったとすると、
・ ならば何故、教育不足が起きたのだろうか?
・ その人はQC工程表の中身は理解していたのだろうか?
・ QC工程表の教育・訓練担当は誰だったのだろうか?
・ 教育・訓練計画と実績管理は誰がやっているのだろうか? 人の配置換えや転勤者への対応は?
・ 教育・訓練による成果は把握されているのだろうか?
・ 実施した教育・訓練によって期待される力量は、担保されたと判断して良いのだろうか?
・ 本人の業務活動のもつ意味と重要性への認識に不備は感じられなかったか?

等々不適合発生には多くの原因が絡んでいると考えられます。原因は、不適合を発生させた本人だけにあったとするには早計ではなかろうか?

 繰り返されるヒューマンエラーには、そこに潜む特徴があり、不適合に至る経緯には連鎖があります。
@ この連鎖には背後要因がある。
A 人が人であるが故に起こすエラーを単純ミスと片付けてはいけない。
B エラーは、誘引されるものである。

これらのエラー誘引要因として
・ 一度に記憶できる量の限界
・ 中断作業からの復帰……例えば、昼休み、他への応援、電話など
・ わかりにくい標識・器具・名称……類似サイズ、類似品など
・ 集団圧力……間違っていると思いつつ集団の判断に従うこと

人的側面に着目した是正・予防処置活動モデル(日本品質管理学会)
                                 

組織側面に着目した是正・予防の顕在化を阻害する要因

不適合に関する情報の共有 →共有化(Communication)ができていない
・書類作成が面倒くさい  (A,B君は知っているが、C君は知らなかった)

不適合のデーターベースの構築 →不適合の事例集
・自分の仕事と関係ない
・他人も知っていること
・自分の失敗は語りたくない
・職務責任を追求される恐れ

人的行動とそれに起因する不適合の予測
・ どうせ改善につながらない

文書化・標準化・改訂しやすい標準化を実現する方法
・文書による標準化では不十分と思われる時は、絵やデジカメ写真を積極的に取り込む

モデルの実施と今後の問題
1) 経営者を含めた人の力量、認識及び教育・訓練のあるべき姿
2) 経営者・組織の要員の力量を評価する方法
3) 力量・認識を向上させる教育などの品質マネジメントシステム
4) 品質保証とリスク管理の効率(費用対効果)
5) 未経験の不適合(事故、トラブルを含む)についてのリスクの重大を体感・実感させる方法論
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