ガルバリウム鋼板(アルミニウム55%-亜鉛43%合金めっき鋼板)  HOME 技術資料室 技術用語
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 ガルバリウム鋼板は米国ベスレヘムスチール社で開発された製品で、アルミニウム(Al)55%、亜鉛(Zn)43.4%、珪素(Si)1.6%の合金を溶融メッキしたものです。亜鉛メッキ鋼板に比べて3〜6倍の耐久性がある優れた鋼板で、全世界で生産販売されています。

 Al はめっき層表面に強固な不動態皮膜を形成して、めっき層を保護します。Zn の含有量が低下することで犠牲防食性能は劣化するものの、Al の不動態皮膜とZn 腐食部の腐食生成物がめっき層の腐食進行を抑制するため、全体として高い防食性を発揮します。合金比率は、Zn の犠牲防食性能と Al の不動態保護性能のバランスで決められています。開発メーカーであるベスレヘムスチール社の実験によると、めっき皮膜寿命は、塩害地域で約 15 年、工業都市や田園地帯で約 25 年以上との結果が出ていますが、各製造メーカーによって色々異なる保証をしています。  表面は右写真に見られるように、めっき合金の結晶粒による模様(スパングル)が視認できる大きさに発達しており、独特の光沢を有しています。こうした効果で、ガルバリウム鋼板は熱反射性能が高くなっています(熱反射率 70-75%、通常の亜鉛めっき鋼板では 30-40%程度)。また、アルミニウム主体の合金なので、合金の融点が約 570℃と、亜鉛の融点が約 420℃の亜鉛めっき鋼板よりも高くなります。なお、母材を高温の溶融めっき槽に浸すため、母材の機械的性質はめっき前の母材とは異なり。加工性はやや低下します。

1.主な用途と使用上の注意事項
 ガルバリウム鋼板は高い防食性を生かして、建物の外壁や屋根の材料、あるいは各種建築材料(雨樋・ベランダまわりなど)として広く使われています。同じ耐食鋼材として使用されるステンレス鋼板に比べて購入単価が大幅に安いことから、ガルバリュームが選択される場合がありますが、防食性能自体はやはりステンレスには劣ります。
 耐食性のほかに熱反射性などを生かした産業機械や電気器具などへの使用も少なくありません( 350℃程度までであれば使用可能)。
 また、屋外使用向け塗装鋼板の母材としても、幅広く用いられています。めっき表面にさらに塗装を行うことで、より高度な防食性+追加機能をもたらします。

(用途例)
建築・土木 屋根、壁、間仕切り、ダクト、サッシ、ドア、ガードレール、コリュゲートパイプ
電気機器 冷蔵庫、洗濯機、エアコン、自動販売機、ショーケース、レンジ、ストーブ、オーブン、こたつ
産業機器 コンテナー、煙突、熱交換器、洗車機、各種カバー

 使用に当たっての注意事項は以下の通りです。
(1) 通常の亜鉛めっき鋼板に比べて若干加工性が劣るため、ロール・プレス加工時には条件設定をシビアに設定する必要があります(紐付契約であれば、注文時に特別な仕様を付加することで、加工性を改善した製品を用意することが可能)
(2) 溶接も可能ですが、条件設定に工夫が必要です
(3) 多少の高温環境下でも使用が可能です
(4) 施工時にモルタル・コンクリート等のアルカリ性の素材とは接触を避ける必要があります(めっき面が変色・変質するため)
(5) 常時浸水したり結露が頻発するような場所では、ガルバリウム鋼板でも急速に錆が進行するので、注意が必要です(メーカー保証外)
(6) 塗装は事前にテストを行ってから実施する必要があります(可能であればメーカー製造のカラー塗装鋼板を用いるのが安全)

2.品質
1) 耐食性

   
2) 耐熱性・耐酸化性
 ガルバリウム鋼板は、アルミニウム−亜鉛合金めっき層のアルミニウム含有率が質量比で 55%、容積比で 80%と高いため、アルミめっき鋼板に近い耐熱性能を示します。  300〜350℃の高温状態で長時間使用しても、合金化反応進行によるめっき表面の変色や大気中酸化による質量増加が少なく、亜鉛めっき鋼板よりも優れた耐熱性能があります。

(参考)工場屋根材に使用した場合の温度効果
 ガルバリウムは熱反射率が比較的高いため、屋根材に使用した場合に室内温度をある程度抑える効果が期待できます。室内の温度が何度になるかは、換気の仕方や建屋の断熱材の使用程度によって非常に影響されるので、一概には言えませんが、一般的に下記のような計算が成り立つので、実際の現場の条件を入れて比較試算してみることはできます。

@屋根の受熱面積を M m2 とすると、工場内への入熱量は、ガルバリュームで屋根を葺いた場合で X≒65 w/m2×M、普通亜鉛鉄板の場合で X≒110 w/m2×M
A工場内に蓄積する熱量(kcal/hour)=(入熱量 Xw−放熱量 Yw)×0.86 kcal/hour
B建屋内の空気重量(kg)=Z m3×比重 1.057 kg/m3
C建屋内空気の換気率=n回/hour
D空気の比熱=0.24 kcal/kg℃
とすると下記の等式が成り立ちます。
   Z×1.057×n×t℃×0.24=(X−Y)×0.86
これから工場内の推定温度上昇代t℃は、外気温に対して、
   t℃=(X−Y)×0.86/( Z×1.057×n×0.24)
X にガルバリュームの 65 を入れた場合と亜鉛鉄板の 110 のを入れた場合で比較すると、概略の温度の差が推定できます。放熱量 Y は屋外の方が気温が高い東南アジアでは無視して良いと思います。
           

3.JIS G3321(赤字は2005年における主要改定点 )
1)種類と記号及び機械的性質

記号 用途 YP
kg/mm2
TS
kg/mm2
El(%) 曲げ
t<0.4 t<0.6 t<1.0 t<1.6 t<2.3 AZ90 AZ120 AZ150



SGLHC 一般用 ≧(205) ≧(270) 1t 2t 2t
SGLH400 構造用 ≧295 ≧400 ≧18 2t 3t 3t
SGLH440 (協定) ≧440 (協定)
SGLH490 ≧365 ≧490 ≧16 3t 4t 4t
SGLH540 (協定) ≧540 (協定)



SGLCC 一般用 ≧(205) ≧(270) ≧(20) ≧(21) ≧(24) ≧(24) ≧(25) 1t 2t 2t
SGLCD 絞り用 ≧270 ≧27 ≧31 ≧32 ≧33 0t 1t 1t
SGLCDD 深絞り用 ≧270 ≧29 ≧32 ≧34 ≧35 0t 1t 1t
SGLC400 構造用 ≧295 ≧400 ≧16 ≧17 ≧18 ≧18 ≧18 2t 3t 3t
SGLC440 ≧335 ≧440 ≧14 ≧15 ≧16 ≧18 ≧18 3t 4t 4t
SGLC490 ≧365 ≧490 ≧12 ≧13 ≧14 ≧16 ≧16 3t 4t 4t
SGLC570 ≧560 ≧570

2)最小めっき付着量と相当めっき厚さ

記号 めっき付着量(両面合計g/m2 相当めっき厚さ
(mm)
3点平均 1点最小
(AZ70) ≧70 ≧60 0.026
AZ90 ≧90 ≧76 0.033
AZ120 ≧120 ≧102 0.043
AZ150 ≧150 ≧130 0.054
AZ170 ≧170 ≧145 0.062
(AZ185) ≧185 ≧160 0.067
(AZ200) ≧200 ≧170 0.072

3)化成処理
記号 種類
C クロム酸
M 無処理
4)塗油の種類
記号 内容
O 塗油
X 無塗油

5)標準板厚(mm)
0.27 0.30 0.35 0.40 0.50 0.60 0.70 0.80 0.90 1.0 1.2 1.4 1.6 1.8 2.0 2.3

6)厚さの許容差(mm)
 (1)表示厚さに上記項目2の相当めっき厚さを加えた数値に適用する
 (2)厚さの測定箇所は側縁から25mm以上内側の任意の点とする
素材 冷延原板 熱延原板
一般用 構造用
t:表示厚さ w<630 w<1,000 w≦1,250 w<1,000 w≦1,250 w≦1,250
0.25≦t<0.40 ±0.05
t<0.60 ±0.06
t<0.80 ±0.07
t<1.0 ±0.07 ±0.08
t<1.25 ±0.08 ±0.09
t<1.60 ±0.09 ±0.10 ±0.11
t<2.00 ±0.11 ±0.12 ±0.13 ±0.17 ±0.18 ±0.20
t<2.30 ±0.13 ±0.14 ±0.15 ±0.18 ±0.20 ±0.21
t<2.50
t≧2.50 (±0.15) (±0.16) (±0.17)

7)板幅・長さの許容差(mm)
区分 冷延原板 熱延原板
ミルエッジ カットエッジ
板幅 -0〜+7 -0〜+25 -0〜+10
長さ -0〜+15 -0〜+15

8)横曲がり・キャンバー(mm)
区分 冷延原板 熱延原板
切板 コイル 切板 コイル
L<2,000 L≧2,000 L<2,500 L<4,000 L≧4,000
w<630 ≦4 ≦4/ 2,000mmL ≦5 ≦8 ≦12 ≦5/ 2,000mmL
w<1,000 ≦2 ≦2/ 2,000mmL ≦4 ≦6 ≦10
w≧1,000 ≦3 ≦5 ≦8

9)平坦度(mm)
区分 冷延原板 熱延原板
反り 耳波 中伸び
w<1,000 ≦12 ≦>8 ≦6 ≦16
w<1,250 ≦15 ≦9 ≦8
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