シーケンス制御 (Sequential Control)     HOME 技術資料室  技術用語
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1.概 要
 シーケンサーは、入力機器の指令信号ON/OFFなどに応じて、出力機器をON/OFF することにより、シーケンス制御を実現する専用コントローラ (計算機)です。どの入力装置信号がON/OFFの条件で、どの出力機器が動作・停止(ON/OFF)するかに関する制御内容は、専用の命令語によるプログラムとして、シーケンサ内部(より正確にはシーケンサ CPU)に書込んでおくことになります。
        
 コイルセンターで使われているスリッターラインやレベラーラインをはじめ、全ての加工設備は電気的な制御により駆動します。多数の機器を全体で一糸乱れず動かす為に複雑な制御方法が組込まれ、また各所に自動制御が組み込まれています。
 機械を動かす力は電気によるモーターや油による油圧を利用しますが、複雑な機械設備全体の動きを支障なくコントロールするには、電気による制御回路が主体に適用されます。

 一般的に機械設備の電気制御関連図面は、次の6種類があります。@シーケンス制御回路図 A電気(制御)機器配置図 B配線系統図 C制御装置内部接続図 D操作盤スイッチ配置図 Eその他(部品表など)
 ここでは、機械設備の駆動をコントロールする電気制御装置であるシーケンス制御関係について説明します。

 シーケンス制御には100〜200V程度の電圧の電流を制御装置に流して接点を開閉させることにより ON−OFF制御する方法と、0〜30V程度の電圧で半導体やコンデンサー・抵抗で組み合わされたエレクトロ回路を制御する方法とがあります。

2.有接点(電磁リレー・有接点リレー)方式と無接点方式(シーケンサー)
 電気制御用に使われる制御器具には、電磁継電器(電磁リレー)をはじめ各種の継電器、電磁開閉器、しゃ断器などがあります。継電器は一般にリレーと呼ばれ、電動力応用の機械の制御や保護を目的で用いられ、用途・構造別に多くの種類があります。 昔は継電器(リレー)と言えば、殆ど電磁石の吸引力を利用した電磁継電器(電磁リレー)に限られていましたが、トランジスタなどの半導体を応用した電子的継電器が開発され実用化されました。普通、前者を単にリレー(有接点リレー)と呼び、後者を無接点リレーと呼んで区別しています。いずれの場合も小さな入力信号電流で、大きな或いは多数の出力信号電流をON−OFF制御する一種の増幅機能を持っている点で共通しています。
 反対に大きな違いとして、
a)電磁継電器には可動部分があるのに対し無接点継電器には可動部分がないこと
b)電磁継電器は入力回路と出力回路が電気的に絶縁されているのに対し、無接点継電器では電気的に繋がっていること
などの差が上げられます。 この為、性能にも差があり、表1.にこの関係を整理し表示します。
表1.有接点(電磁リレー)方式と無接点(シーケンサー)方式の比較
有接点(電磁リレー)方式 無接点(シーケンサー)方式
機 能 多数のリレーを使った複雑な制御は、経済性・信頼性の点より困難
基本的に、ON/OFF制御のみ
プログラムにより、柔軟に複雑な制御も実現可能
本来のシーケンス的制御以外に、データ処理に関するアナログ・位置決め・通信など多様な機能が実現できる
経済性 小規模のシステムでないと、経済的に実現困難 リレー数約10個以上のシステムでは、一般にシーケンサ制御の方が経済的
制御内容変更への柔軟性 配線変更する以外に、方法は無い プログラム変更により、自由自在に変更可能
信頼性 リレー接点利用のため、長期使用に対しては、接触不良と寿命の制約がある 基本的に、オール半導体のため、高信頼性、長寿命
保守性 リレー故障の場合、原因特定と交換作業が大変 周辺ソフトなどで故障状況のモニタが可能。交換するにしても、簡単にユニット交換が可能
装置の大きさ 規模が大きくなると、装置がかなり大きくなる 基本的に、複雑的な制御に対しても、装置は大きくならない
システムの設計・開発時間 規模が大きくなると、時間・人工の点で現実的でなくなる 複雑な制御でも、リレー方式に比べると、設計が容易で、製作も手間がかからない
出力容量 大出力が得られる 小出力しか出せない
応答速度 遅い(50×10-3 sec) 速い(数10〜数100×10-6sec)
出力回路数 多い 少ない
入力と出力 独立している 独立していない
寿  命 短い(数10〜数100 万個) 半永久的
接触不良 ある ない
動作の確認 目視・耳で確認できる 計器が必要
耐ノイズ 強い 弱い
耐振動・衝撃 弱い 強い
価 格 安価 高価
 表1.から分かるように、無接点方式は高信頼性、高速動作、小形軽量など多くの優れた特長がありますが、経済性、技術的な難しさなどの点で、有接点方式を凌駕するに至っていない所があります。しかしながら特に高信頼性、高頻度な制動動作を必要とする用途への応用が増加し、最近ではこの応用の一種と考えられるトランジスタやIC(Integrated Circuits) による電子回路を利用したものや、コンピュータの技術を利用したシーケンサなどに発展し数多く実用化されるようになりました。図1に電磁継電器と無接点継電器の原理的差異を示します。
  
 最近のシーケンス制御装置は、その心臓部といわれる命令処理部には色々な構成でもって制御方式が設計され、また、各種の制御機器が用いられますので、表2に全体感が理解できるよう、命令処理部の方式とその構成要素を示します。
 命令処理部の方式は、配線倫理方式とプログラム内蔵方式とがあります。配線倫理方式は有接点式または無接点式の素子や要素の配線接続で設計するので、制御動作の内容がほぼ固定されますが、プログラム内蔵式は制御倫理をソフトウェア化してプログラムとして内蔵させるため、制御内容の変更に融通性がある便利さから、最近は多く利用されます。
    
3.シーケンス回路 次に電動機(モーター)制御の例を取り上げ、シーケンス回路について説明します。シーケンス回路は、主回路と論理制御回路(ロジック回路とも言われ、シーケンス設計の中心をなす回路)とからなり、電動機制御の事例では次のように構成されます。

(1)主回路
 主回路とは、制御装置において、外部より電源の供給を受ける端子台より以降で、制御回路に至るまでの電源開閉器や、電動機の動力回路などの部分のことを言います。
 電動機制御の場合、主回路は電源回路と電動機回路の二つに大別されます。電源回路は、端子台と開閉器からなり、外部の分電盤などより、装置に電源を導き入れ、更にその電源の開閉(ON-OFF)をする部分をいいます。

 電動機回路は、電動機の始動・停止、回転方向正転・逆転、同じ状態を継続する自己保持や寸動機能、始動電流の調整やオーバーロード防止等を制御する機構です。

(2)論理制御回路
 シーケンス制御は、予め定められた順序に従って制御動作の各段階を逐次進めていく制御で、機械装置の運転や操作の自動化には、極めて大切な一つの制御機構です。 そのために、シーケンス制御には、次のような論理回路を使って回路が設計されます。

@ アンド回路 (AND) 直列接続回路 AとBのAND
A オア回路 (OR) 並列接続回路 AとBのOR
B ノット回路 (NOT) 否定回路(ブレーク回路) Aの否定
C ナンド回路 (NAND) 否定回路 AとBのANDの否定
D ノア回路  (NOR) 否定回路 AとNのORの否定
 
 図2.は三相誘導電動機の始動時に大電流は瞬間的に流れるのを制御するY−△始動制御系の構成図を示します。詳細説明はここでは省略しますが、概念的な理解は必要です。
    
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