JIS規格体系の概要 (赤字は2005年改定点)   HOME 技術資料室 技術用語
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 鋼板の規格は、日本工業規格(JIS)をはじめとして、鉄鋼メーカー規格(例えば新日鐵規格)、ユーザー規格(例えば日産規格SP○○○)、団体、協会規格(例えば自動車工業規格)、さらには同様に外国規格(アメリカ:ASTM、SAE、ドイツ:DIN、ロシア:GOST)などと多岐にわたっています。
一方、これら各国規格を統一しようとする動きもあり、国際規格(ISO)として整備されつつあります。
 ここではJISを主体に、薄板製品に共通する規格体系について説明します。
規格は、商取引の根幹を規定(特に品質と価格)する極めて重要なものですので、ここの規程内容の詳細は規格原本を参照することをお奨めします。(例えば、日本規格協会発行「JISハンドブック 鉄鋼」)

1)加工特性からの体系
 薄板製品の大半は軟鋼板(抗張力では270N/mm2クラス)でなんといっても期待される特性は加工成形性です。軟鋼板の加工形態では絞り成形が多いことから、次の様な体系となっています。
成形性 熱延鋼板 冷延鋼板 電気亜鉛メッキ 鋼板 溶解亜鉛メッキ 鋼板
一般用 SPHC SPCC SECC SGCC
絞り用 SPHD SPCD SECD 絞り用1種 SGCD1
絞り用2種 SGCD2
絞り用3種 SGCD3
深絞り用 SPHE
SPHF
SPCE
SPCF(非時効)
SECE
SECF(非時効)
超深絞り用 SPCG(非時効) SECG(非時効
  注) C:Commercial、D:Deep Drawing、E:Extra Deep Drawing
     
F:非時効、G:通常IF鋼で製造

 規格グレードは、絞り性と相関の高い引長試験に於ける「伸び値(%)」を主体に区分けされています。
薄板製品の用途は多岐にわたっており、上記JISの区分だけでは不充分な面もあり、自動車部品用を主体として鉄鋼各社では独自のメーカー規格でメニューを揃えています。
例えば、新日鉄 = 超深絞り用(SSPDX)、絞り用(SPLY、SPMY)など。

2)抗張力からの体系
 鋼板の長所は、加工成形し易いことと機械的強度が強いことです。しかし、鉄は重いと言う欠点があるため、強度はなるべく高く、しかも加工性はある程度確保された鋼板が求められ、高張力鋼板(ハイテン)が開発されました。

 熱延鋼板は比較的JISで取引きされますが、それでも抗張力が490N/mm2 以上になるとJISの体系では不充分で、各鉄鋼メーカー規格あるいはユーザー規格で取引きされているのが実体です。
 冷延鋼板や表面処理鋼板になると、この傾向はますます強くなっています。これはハイテン(高張力鋼)材は技術的に開発途上のため、高強度と高成形性を兼ね備えた鋼板のの開発に鉄鋼各社が競い合い、日進月歩だからです。一般的に強度が高くなるほど加工性は劣化します。
抗張力で区分した体系で見ると次のようになります。
数値はいずれも抗張力(N/mm2)の下限値。 (  )内は新日鐵規格例です。
抗張力(N/mm2 熱延鋼板 冷延鋼板 電気亜鉛メッキ 鋼板 溶解亜鉛メッキ 鋼板
270 級   SPHC SPCC SECC SGCC  
〜400 級   SAPH310        
SS330   (SANC340) (EGSAFC340R) SGC340 (AS340R)
  SAPH370   (EGSAFC370R)   (AS370R)
SS400 SAPH400 (SANC390) (EGSAFC390R) SGC400 (AS390R)
440 級   SAPH440 (SANC440) (EGSAFC440R) SGC440 (AS440R)
490 級 SS490 (SANH490) (SANC490)   SGC490  
540 級 SS540 (SANH540) (SANC540)      
590 級   (SANH590) (SANC590)      
なお自動車メーカーからの車体軽量化ニーズは高く、一部には100〜120Kg/mm2級の超ハイテン材も実用化されています。

3)使用目的(用途)からの体系
 薄板製品はいろいろなものに使われますが、使用目的(用途)にあわせた専用の規格があります。以下にその主なものを記載します。
品 種 使用目的(用途) 規 格 名 称 記号(例) 備   考
熱延鋼板 一般用・絞り用軟鋼板 熱間圧延軟鋼板及び鋼帯 SPHC 最も汎用性のある熱延鋼板(ベース商品)
一般建築・構造用 一般構造用延鋼材 SS400
主として自動車足回り部品や保安部品 自動車構造用熱間圧延鋼板及び鋼帯 SAPH440 プレス加工性を加味した強度保証鋼板
溶接鋼管用 鋼管用熱間圧延鋼帯 SPHT1 成分と機械試験値規定
圧力容器用 高圧ガス容器鋼板 SG255 成分と機械試験値規定
屋外使用耐侯用 高耐侯性圧延鋼材 SPA-H Cu,Cr,Niなどを含有
機械構造用 機械構造用炭素鋼鋼材 S35C 成分規定、熱処理使用
冷延鋼板 一般・絞り用軟鋼板 冷間圧延鋼板及び鋼帯 SPCC 汎用性冷延鋼板
塗装焼付硬化用 焼付硬化型高強度冷延鋼板 (SAFC340RB) 自動車内外板の軽量化
ほうろう用 ほうろう用脱炭鋼材 SPP 特殊成分規制
屋外使用耐侯用 高耐侯性圧延鋼材 SPA-C Cu,Cr,Niなどを含有
みがき特殊帯鋼 みがき特殊帯鋼 S35CM 成分、組織、硬さ管理
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