ダイオキシンとは  (Dioxin)    HOME 技術資料室  技術用語
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1.ダイオキシン類
1) 塩素化ジベンゾパラダイオキシン(Poly-Chlorinated Dibenzo-p-Dioxins;PCDDs)塩素の置換数と置換位置によって75個の同族体・異性体が存在する
      2) 塩素化ジベンゾフュラン(Poly-Chlorinated Dibenzofurans;PCDFs)135個の同族体・異性体が存在し得る
    1)と2)の両方を含めて呼ぶときにダイオキシン類ということが多い
 
2.ダイオキシンの特性
  低・中分子量、低・中極性、中・高沸点性、平板状分子構造、脂溶性、土壌や炭素への高い吸着性、化学的安定性、生体内残留性。
 温度が200℃以下であれば大部分は固体微粒子となっている。水に対する溶解度は極めて小さく、他の固体微粒子に付着しやすい。通常の酸・アルカリには安定であるが、強酸化剤では分解し、光(特に紫外線)によっても次第に分解する。
 
3.毒性
  1)一般毒性
  体重減少、胸腺萎縮、肝臓代謝障害、心筋障害、性ホルモンや甲状腺ホルモン代謝ならびにコレステロール等の脂質代謝への影響、塩素ざそう(クロロアクネ)、 学習能力の低下などをはじめとする中枢神経症状
  2)発がん性
  高濃度ばく露を受けた人の集団において、特に部位を特定せずに広範な部位にがんを発生する可能性が示唆されている。
  3)生殖毒性
  妊娠率の低下、出生仔の低体重、性周期への影響、子供の二分脊椎の増加
  4)免疫毒性
  甲状腺ホルモンや免疫機能の異常
 
4.人体への経路
  発生源から環境中へ排出され、人の体には、大気、水、土壌、食物を通して入ってくると考えられる。脂肪に溶けやすいので、主に人体の肝臓や脂肪組織に蓄積し、母乳にもある程度含まれます。母乳中に含まれるダイオキシン類の濃度は、諸外国とほぼ同じ程度であり、乳児に与える影響は直ぐに問題となる程度ではない
 
5.体内への摂取の目安
 
食物 0.26〜3.26
大気 0.18
0.001
土壌 0.084
0.52〜3.53
毒性評価に基づき環境庁は、より積極的に維持されることが望ましい量として、体重1kg当り1日5pgを定めている。[1pg(ピコグラム)=10-12g]  
体重1kg当りの1日の摂取推定量(単位:pg)
 
6.ダイオキシン類の生成
  ダイオキシン類は“非意図的生成物質”といわれるように、そのものの有用性から生産されるものではなく、意図せずに副生されるものである。その発生源は、化学物質由来、燃焼過程由来、製造工程由来、自然発生に大別できる。
  1)化学物質由来
  ペンタクロロフェノール(PCP)のような農薬や、PCBsなどの製造過程で副産物(不純物)として生成され、製品あるいは廃棄物に含まれるものである。
  2)燃焼過程由来
  都市ごみ、廃木材、化学廃棄物、医療廃棄物の焼却や火葬、自動車の排ガス
  3)製造工程由来
  紙・パルプ製造、金属・非鉄金属精錬
  4)自然発生源
  火山、森林火災
  (参考)日本におけるダイオキシン類発生源と発生量
*TEQ―ダイオキシンの量に換算した値
 
7.ごみ焼却におけるダイオキシン類の抑制
  1)燃焼過程における生成抑制
  有機物の完全燃焼(3T's)をする為の炉構造、空気吹き込み方法などの工夫。
高温(Temperature)、滞留時間(Time)、酸素との良好な混合(Turbulence)
  2)ガス冷却過程(ボイラー、集塵設備における再生成抑制
  ばいじん中に含まれる金属(銅化合物の触媒作用が強い)が触媒となって300℃付近の温度でダイオキシンの再合成が盛んとなるので、その温度を避けること。
  3)ばいじん補集の効率化
  ダイオキシンの多くはばいじんに吸着されていると考えられるので、微粒子まで含めた集塵率の向上が必要。
  4)補集ばいじん中のダイオキシンの分解
  完全燃焼によってばいじん中のダイオキシン濃度は下げられるが、それでも含まれてくるダイオキシンについて還元分解あるいはばいじん(飛灰)の溶融によって高温分解するものである。  排ガス中のダイオキシン濃度の一層の低減のためには、活性炭吸着、触媒分解、反応抑制剤の添加などが提案されている。
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