特殊鋼         HOME 技術資料室 技術用語
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 特殊鋼とは、鉄に炭素以外のさまざまな元素を一定量以上加えた合金鋼のことです。添加する元素によって、硬度、強度、粘り強さ、耐磨耗性、耐熱性、耐食性などの特性が増します。たとえば、ニッケルを加えると粘りと強度がアップし、モリブデンでは高温での強度、硬度が増す。また、銅を加えると耐食性が増すといった具合です。つまり、いろいろな要求や用途に応じてさまざまにハガネの性質をアップさせるのが特殊鋼で、特殊鋼はハガネのスーパースターといえます。

1.特殊鋼の定義
次の鋼は特殊鋼と呼ばれます
@C含有量が0.6%以上の鋼
ANi>0.3%、Cr>0.3%、Mo>0.1%、V>0.1%、W>0.3%、Co>0.3%、Al>0.3%、
 Cu>0.3%、P>0.1%、Ti>0.1%を含む鋼
 
2.特殊鋼に使われる主な添加元素と効果(高砂鐵工資料より)
元 素 特     徴
C:炭素 鋼はFeとCとの合金であることが基本となり、諸特性はC%により決定されます。C量の割合と各温度における鋼の状態を表わしたものがFe-C系平衡状態図となります。鋼はC1.7%以下のFe-C合金のことで、C%が0.8%未満を亜共析鋼、0.8〜1.7%を過共析鋼、0.8%のものを共析鋼と呼びます。
Mn:マンガン Mn量によりAl変態点が低下し、焼入れがし易くなります。靭性を劣化させることなく鋼の強さを増します。またSと結合して硫化物を作り、赤熱脆性を防止します。鋼の精練過程における脱酸剤としても有効です。
Si:けい素 鋼精練時の脱酸剤に使われます。鋼中に溶け込みフェライト相を強化し、靭性を減少し硬度を増加させます。また300℃以下の低温焼戻し軟化抵抗を増します。
P:りん 一般に不純物として扱われる元素で、偏析を起こしやすく衝撃性を低下させ、焼戻しによる脆性を促進します。一方、固溶体として強度を増し、快削性の改善にも役立ちます。
S:硫黄 一般に不純物として含有し、熱間加工性を害します。Mn硫化物として被削性改善の為に添加されることもあります。
Cu:銅 赤熱脆性を起こしやすい一方、耐食性を改善します。
Ni:ニッケル A1変態点を著しく低下させ、硬さ・強さ・靭性・焼入れ性を向上させます。少量のCrやMoを複合添加する方が効果が出ます。また耐食性を良くし、低温脆性も防止します。
Cr:クロム 焼入れ性を増し、焼戻し軟化抵抗が大きくなります。炭化物を作りやすく、浸炭性を促進させます。また耐食性を良くし、高温強度の増加にも役立ちます。
Mo:モリブデン 炭化物を作りやすく、焼戻し軟化抵抗を増大させます。Crとの併合で効果は上がります。また少量で焼入れ性を良くし、結晶粒粗大化温度を上昇させ、焼戻し脆性防止効果が大きい。
V:バナジウム 焼入れ性を増します。少量添加で結晶を微細化し、焼戻し軟化抵抗が大となり、強さ・靭性を改善します。
B:ボロン 微量添加で焼入れ性を増大させます。
Ti:チタン 鋼の深絞り性を向上させます。結晶粒微細化効果があり、焼入れ性を劣化させます。強力な脱酸剤・脱窒剤として使用されますが、炭窒化物の硬い介在物ができ、被削性を低下させます。
Al:アルミニウム 精練時の脱酸剤としてよく使われます。鋼中の窒化物(AlN)により結晶粒の微細化をすることができます。
Nb:ニオブ 結晶粒の微細化作用があり、結晶粒粗大化温度を高める働きをします。また焼戻し脆性を減少させます。
Ca:カルシウム 強力な脱酸剤。非金属介在物の状態や分布を調整、いわゆる介在物の球状化を行います。
O:酸素 各種元素と酸化物を作り、熱間加工性を劣化させます。地キズの最大要素。
H:水素 白点の発生を助長し、毛われ発生の原因となります。またメッキなどで鋼中に浸入し、水素脆性のもととなります。
N:窒素 Al、V、Ti、Nbなどと結合し、結晶粒を微細化させます。また低温における靭性を低下させます。

3.みがき特殊帯鋼の代表的な例と特性(高砂鐵工資料より)
区分 代表
鋼種
説 明 用途例




SK85M ばねとして非常に広く使用され、用途的には強度、耐摩耗性を必要とする場合に使用されます。
この鋼種は炭素を主要元素とし、非金属介在物も比較的少なくなっています。
また合金元素を含有していない為に焼入れ性が小さいとされていますので、焼入れに際しては冷却材を十分に検討する必要があります。
ばね
ワッシャー
ぜんまい
バンドソー
刃物
クラッチ
ダイヤフラムスプリング


S60CM 炭素工具鋼のSK5Mと比較して炭素量は低いがマンガン量が高くなっていますので、焼入れ性がよいとされています。 ばね
ワッシャー
安全ベルトバックル
安全靴先芯
ダブルクリップ

        
4.品種(JFEカタログより)
  
5.表面と熱処理(JFEカタログより)
  
表面仕上げの例としては、SAE1060-ABなどと表します。
記 号 内  容
A(Ann) 焼鈍で硬度は(HV190以下)
B(Bright) ブライトロール仕上げ
硬引き硬度(HV200以上)
S(SkinPass) あくまで硬さの調整的な意味

いずれも場合も、メーカー紐付きでの申込み製作材のミルシートには表記していますが、一般市場材ではそこまで表記しないのが一般的です。また、硬度もA(ナマシ)かC(硬引)は多く聞かれますが、S(スキンパス)はあくまで硬さの調整的な意味なので、あまり一般的には使用されていません。

6.化学成分(JFEカタログより)
 
7.用途例(JFEカタログより)
      
8.硬度換算(JFEカタログより)

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