玉掛作業とワイヤーロープ  日本クレーン協会ホームページより
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<ワイヤーロープ>
1.ワイヤーに掛け得る最大張力
 ワイヤーに掛けられる最大張力は概略下記の計算式で求められます。
  概算基本安全張力(トン)=0.008×(ワイヤーロープ径mm)2

2.ワイヤーが吊るし得る最大荷重は、つり角度によって張力係数を荷重にかける必要があります。
 つり角度が大きくなるほどワイヤーに掛かる張力は大きくなります。

<つり角度と張力係数>
つり角度 張力係数
1.00
30° 1.04
60° 1.16

3.ワイヤーの掛け方の名称


4.玉掛用ワイヤーロープの種類(ワイヤーロープ参照)
構成記号 JIS 6×24 JIS 6×37
断面図
特徴 ストランド心も繊維心であり、柔軟性が良く取り扱い安いので、多く使用される. 柔軟性が良く、JIS 6×24では破断強度が不足する場合に使用される.

5.つり角度と安全荷重(トン)
ロープ種 JIS 6×24A種(安全係数:6、単位:トン) JIS 6×37A種(安全係数:6、単位:トン)
ロープ径 1本2点半掛けつり 2本4点半掛けつり 1本2点半掛けつり 2本4点半掛けつり
公称mm つり角
α≦30°
つり角
α≦60°
つり角
α≦30°
つり角
α≦60°
つり角
α≦30°
つり角
α≦60°
つり角
α≦30°
つり角
α≦60°
6 0.57 0.51 1.14 1.02 0.615 0.55 1.23 1.1
8 1.02 0.912 2.04 1.82 1.09 0.98 2.19 1.96
9 1.28 1.15 2.57 2.3 1.38 1.24 2.77 2.48
10 1.59 1.42 3.18 2.84 1.71 1.53 3.42 3.06
12 2.28 2.04 4.56 4.08 2.47 2.21 4.94 4.42
14 3.11 2.78 6.23 5.57 3.34 2.99 6.68 5.98
16 4.06 3.63 8.13 7.27 4.38 3.92 8.77 7.85
18 5.14 4.6 10.2 9.21 5.54 4.96 11 9.92
20 6.34 5.67 12.6 11.3 6.84 6.12 13.6 12.2

6.玉掛用ワイヤーロープの保守点検 
★下記のどれか一つでも廃棄基準に達していれば、そのロープは廃棄する必要があります。
(1)本体
点検項目と代表例 廃棄基準
断線数が下表のロープは破棄する。
ワイヤロープの構成 1より当りの可視断線数
6×24 9
6×37 10
摩耗によって、直径の減少が公称径の5%を超えるもの。
腐食によって、表線表面にピッチングが生じて、あばた状になったもの。
【参考】 強度低下率
赤錆大:40〜50 %
局部的によりが詰まったり、戻ったりしているもの。
【参考】 強度低下率
キンクの程度により20〜40% の低下を生じる。


(1)著しくうねっているもの。
(2)又は、d1/dが 4/3 以上になったもの。
(1)著しく表面がつぶれたもの。
(2)短径/長径が、2/3以下になったもの。
著しい鋭角的な曲がりを生じたもの。
著しい疵を生じたもの。
(2)アイ加工部
点検項目と代表例 廃棄基準
アイの頂点部で、著しく繊維心がはみ出したもの。
(1)アイ部分で、ストランドの緩みがあるもの。
(2)差し終わり部で、ストランドの抜けがあるもの。
局部止め部で、ロープの抜け出しがあるもの。
(1)スリーブに著しい曲がり、つぶれ、疵があるもの。
(2)スリーブが摩耗して、元の厚みの2/3以下になったもの。
(3)スリーブにき裂があるもの。

繊維スリング (ナイロンスリング)>
 玉掛け作業に使用される繊維スリングには、主にベルトスリングとラウンドスリングがあり、物流の多様化により各業種で広く使用されています。一方、吊具としての安全性が要求される製品であることから、その材料である合成繊維の特長と共に使用上の注意点をよく理解することが玉掛け作業の事故防止につながると考えられます。
 
1.繊維スリングの種類・形式
 ベルトスリング・ラウンドスリング(以下繊維スリング)の形式は、両端アイ形とエンドレス形があり、ベルトスリングにはリンク、フック等金具が取り付けられた金具付きスリングがあります。
@ベルトスリング
      
     図1 両端アイ形ベルトスリングの例
     
      図2 エンドレス形ベルトスリングの例
     
    図3 金具付きベルトスリングの例
Aラウンドスリング
   
   図1 より糸(例)     図2 たばね糸(例)     図3 心体(例)

      
          図4 両端アイ形ラウンドスリング(例)

      
           図5 エンドレス形ラウンドスリング(例)
2.スリングの選定
 @繊維スリングの選定では、まず用途が一般用か化学薬品用か確認をする。
 A次につり方、つり角度による張力又は定められた使用荷重を確認する。
 B繊維スリングの安全係数は,6以上,リンク及びフック等の金具は5以上とする。
 
3.使用上の注意点
@ 繊維スリングは、形式・つり方及び最大使用荷重を選定して使用する。
A 角張った荷をつる場合には、必ず当てものを角に当たるように装着する。
B 繊維スリングは、つり荷の温度が100℃以下のものに使用する。
C 目通しつりをする場合は、深しぼりをする。
D 一般用の繊維スリングは酸・アルカリ等の化学薬品類には侵されるので化学薬品用を使用する。
E 荷の下から繊維スリングをクレーンで引き抜かない(荷が崩れたり、スリングが損傷することがある)
F 繊維スリングを結んだり、引っ掛けた状態で使用しない。
G 点検の結果、廃棄することになったスリングは、補修したり使用荷重を減らして再使用しない。
H 繊維スリングを持ち運ぶ際に地面や床の上をひきずると摩耗して損傷するおそれがある。
I 繊維スリングは、熱・日光・薬品などの影響を受けない場所に保管する。
J 水・油などにぬれた状態では、滑りやすいので注意する。
K 他のつり具又は補助具と組み合わせて使用するときは、連結部分で繊維スリングが損傷しないようにする。

4.主な廃棄基準
 @ベルトスリング
@) 使用限界標示(色相の異なる糸を織り込んだベルト)の露出又は消失をもって廃棄する。


A) 本体部分の幅方向の1/10、又は厚さ方向に厚さの1/5に相当する切疵・擦疵・引っ掛け疵などがあるものは廃棄(使用限界標示のないもの)する。
B) 全幅に渡って織り目がわからないほどに毛羽だって、たて糸の損傷が認められるものは廃棄する。
C) 熱や薬品などによる著しい変色・着色・溶融・溶解等が認められるものは廃棄する。
D) スリングの使用状況によって外観に損傷及び異常がなくても、下記の使用期間を超えるものは廃棄又はメーカーに点検を依頼する。
 *屋内使用の場合は、使用開始後7年を経過したもの。
 *常時屋外使用の場合は、使用開始後3年を経過したもの。
E) 金具
 *金具に変形(曲がり・ねじれ・ゆがみなど)が認められるもの
 *著しい当たりきず・切り欠き疵などがみとめられるもの
 *き裂が認められるものや目視でき裂の疑いがあり、磁粉探傷や浸透探傷によりき裂が認められるもの
 *摩耗量が元の寸法の10%を超えるもの
 *全体に腐食が認められるもの、又は局部的に著しい腐食のあるもの
 
 Aラウンドスリング
@) アイ・本体部分等の表皮ベルトが破損して芯糸の露出が明らかに認められるものは廃棄する。
A) 表皮ベルトの接合部または連結部の縫糸がほつれて、芯糸の露出が認められるものは廃棄する。
B) 芯部が部分的に硬くなって、太さに不均一さが目立つものは廃棄する。
C) 熱や薬品などによる著しい変色・着色・溶融・溶解等が認められるものは廃棄する。
D) 使用期間については、ベルトスリングと同じ。

<玉掛作業>
1.巻き上げ〜移動時の注意点
 玉掛けが終わって荷を巻上げる場合は下記の点を守ることが必要です。
(1) 玉掛け状態が良好かどうか確認しながら、ロープが張るまでは微速で巻上げを行う。
(2) 地面から離す時(地切時)、床上10〜20cmで一旦停止し、つり荷の安定を確認する。
(3) 巻上げはつり荷が他の障害物に接触しないか等に注意し、つり荷の高さは、原則として2m以上巻上げる。
(4) 人が作業している場所や通路は避けて通す。

2.玉掛合図(日本の例)
1.呼び出し 2.位置の指示 3.巻き上げ 4.巻き下げ
片手を高くあげる 指で示す 片手を上に上げ輪をかく 手のひらを下にして下へ
5.ブーム上げ 6.ブーム下げ 7. 水平移動 8.微動(少し動かす)
親指を立てて上へ 親指を立てて下へ 手のひらを移動方向へ 小指で巻上げ・巻下げ
9.ブーム伸縮 10.停止 11.急停止 12.作業完了・終了
こぶしを頭に乗せたあと、伸ばす時は親指を立てて握りこぶしを斜め上へ、縮める時は立てた親指を下に向けて握りこぶしを斜め下へ 手の平を高く上げる 両手を広げ高く上げて振る 挙手又は頭上に交差

3.玉掛資格(日本の場合)
 玉掛けとは、ワイヤロープ等の吊具を使用して荷を移動式クレーン等のフックに掛けたり合図を行なったりして、吊荷を所定の位置に運搬する一連の作業をいいます。玉掛けは、吊荷の質量ではなく、使用するクレーン等の吊上げ荷重によって就くことのできる資格が定められています。吊上げ荷重が 1 ton 未満の移動式クレーンの玉掛けは玉掛けの業務に係る特別教育を受けた者又は玉掛技能講習修了者が行なうことができますが、吊上げ荷重が 1 ton 以上の移動式クレーンの玉掛けは玉掛技能講習を修了した者でなくてはなりません。
吊上げ荷重 玉掛の業務に係わる
特別教育の修了者
玉掛技能講習の修了者
1 ton 未満
1 ton 以上 ×
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