材質試験の種類 (Mechanical Properties)「プレス加工」参照 HOME 技術資料室 技術用語 =================================================== 鋼板の性質の測定には以下に示す様な色々な方法があり、各国の規格もこれらの測定値で決められています。 1.引張試験 (Tensile Test) (1)元の板の右端@をゼロ点にして右方向に「伸びた量」、上方向に「加えた力の大きさ」をプロットしてゆくと右図のようになります。 (2)板に力を加えて行くと初めのうちは力に比例して板は伸びてゆき、Aの点までは力を抜くと元の長さに戻ります。この変形を「弾性変形」と言います。 Aの点を超えると板は力を抜いても元の長さに戻らなくなり、「塑性変形」の領域に入ります。塑性変形の始まる点Aを「降伏点(Yield Point=YP)」と言い、加えた力を板の当初の断面積 a mm2で割って Newton/mm2 (MPa) で表した値を「降伏応力(Yield Stress)」と云います。 降伏点が明確に現われない材料に関しては、0.2%の塑性変形を生じた時の応力(「耐力」)で代用します。 (3)更に力を加えてゆくと、Bのところまでは板全体が均一に変形してゆきますが、Bで板にくびれ(ネッキング)が出始めます。この力を「抗張力(Tensile Strength=TS)」といい、板の当初の断面積aで割ってNewton/mm2 (MPa)で表します。 (4)以後はくびれた部分が集中的に伸びてやがて破断します。破断した点Cでの伸びた長さを元の長さで割って%で表したものを「伸び(Elongation=El)」又は「全伸び」と言います。 A〜Bまでを「均一伸び」、それ以降を「局部伸び」と言います。 代表的な冷延鋼板ではYP=200 MPa、TS=300 MPa、El=40%程度です。抗張力(TS)を高めた鋼板が高張力鋼板(High Tensile Steel)又はハイテンで、1000 MPaを超えるものが出ています。 注)引張試験片のサイズに関しては「外国規格」参照 |
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2.エリクセン試験 (Erichsen Test) 鋼板を軽く挟んだ状態でポンチを押し込んでゆき、鋼板にクラックが入った時点で止め、鋼板の変形高さ h mmを測定します。この値を「エリクセン値」と言います。 |
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3.硬度試験 (Hardness Test) 1)鋼球を初期荷重10kgの力で鋼板に押し込む 2)次に試験荷重100kgで押し込 3)再び初期荷重10kgに戻す 1)と3)の窪みの差 hから次の式で計算した値がロックウエルB硬度です。 HRB=130−0.5 ×h この場合、鋼球の代わりにダイヤモンド圧子を用いたものが、「ロックウエルC硬度(HRC)」になります。各測定方法の間の関係は「硬度換算」を参照。 |
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4.曲げ試験 (Bend Test) ![]() 判定は曲げた部分にクラックが入ると不合格になります。 ![]() |
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5.ランクフォード試験 (Lankford Test) 薄板をプレス加工する場合の代表的な例が深絞り加工です。典型的な例は下図に示すように、円板が幅を縮めながら長さ方向に伸ばされてゆき、最終的に円筒形になる加工です。 鋼板には板幅方向に縮みやすい性質のものと縮みにいものがあり、幅が縮みにくい鋼板を深絞り加工すると、板はしわになって円筒部に流れ込みにくくなると同時に板厚が薄くなって破断してしまいます。 すなわち深絞り加工には、板幅が縮みやすく板厚が薄くなりにくい鋼板が適している訳です。(「薄板の深絞り性」参照) ![]() |
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![]() ランクフォード値=板幅の変化代/板厚の変化代 この値は鋼板内の測定方向により、圧延方向と板幅方向と45°方向でかなり差があることから、各方向で測定した値を下記の式で平均化したものを r の上に横線を入れてアールバーと言い、普通にランクフォード値といったらこれを指します。 この値が大きいほど板厚が減らずに板幅が縮みやすい性質を表し、深絞り加工に適しています。 |
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6.各試験値間の相関関係 ![]() HOME 技術資料室 技術用語 薄板の深絞り性 |