ISO/TS16949:2002の概要(JQA資料より)HOME 技術資料室  技術用語
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1.はじめに
 自動車業界のセクター規格IS0/TS16949は、世界の自動車産業の品質システム規格を統合することにより、グローバル展開を目指す各国の自動車メー力一が部品等をグローバルに調達する際、供給者の選別に共通の基準を適用する事によって、高品質の保証と、低価格化を図ることを目的としたものです。
 現在、自動車業界では、調達・納入の方向として脱系列化、モジュール化、グローバル化が進んでおり、このような動きがますます強まる傾向にあります。
 このような動きを受け、IS0/TS16949は、従来のビッグ3(GM、フォード、ダイムラークライスラー)の部品調達規格であるQS-9000に更に新たな要求事項を追加するなど一段と厳しい規格となっていますが、世界のほとんどの自動車メー力一の要求事項に応え得る規格となっています。
 加えて、この認証制度を掌る国際的な自動車産業界の連合組織、即ちIATF(Intemational Automotive Task Force)は、本規格の真に実効性のある運用が十分に確保されるようにするため、世界の審査登録機関の数を制限し、審査員の資格についても極めて高度な能力を要求しています。

2.ISO/TS16949:2002とは
  1) IS0/TS16949の制定は、1997年のIS0/TC176リオ総会でIATFとの協調パイロットプロジェクトの実施のためにタスクグループが設置され検討がスタートしました。そして、1999年3月にIS0/TS16949:1999が第1版として発行され、その後、IS0/TC176の支援を受けて、社団法人日本自動車工業会(JAMA)も含めてIATFにより改定が行われ、第2版としてIS0/TS16949:2002が2002年3月に発行されました。
 
2) IS0/TS16949:2002は、IS09001:1994に自動車業界固有の要求事項を追加しているQS-9000をべ一スに VDA6.1(独)、EAQF(仏)、AVSQ(伊)といった欧州各国の自動車業界用品質システム規格を融合させてできたISOの自動車業界のための品質システム規格IS0/TS16949:1999の改定版であり、IS09001:2000をべ一スに自動車業界固有の要求事項を追加したものです。
 
3) IS0/TS16949:2002では、IATFよりIS0/TS16949:2002の適用を支援する目的で参考文書として『IS0/TS16949:2002に対するIATFガイダンス(IATF Guidance to IS0/TS16949:2002)』が発行されています。(日本規格協会にて対訳本の購入可能)
 
4) IS0/TS16949は、IS09001:2000がIS(Internationa1 Standard:国際規格)であるのに対し、TS(Technical Specification:技術仕様書)として発行されています。しかし、TSは3年毎にISへの移行を含め、改訂を検討されることになっていますので、将来ISへ格上げされる可能性もあります。
 
5) IATFでは、運営機関としてIAOB(International Automotive Oversight Bureau)を設け、IS0/TS16949の具体的な運用を行っています。審査機関として契約を取り交わしたのは全世界で42機関(2003年1月現在)です。
 
6) IS0/TS16949:2002の登録対象となる組織
IS0/TS16949:2002は、顧客が規定する生産部品及び/又はサービス部品を製造する組織のサイトに適用されます。
設計センター、本社及び配給センターのような支援部門は、サイトに隣接していても離れていても、サイトの支援についてサイト審査の一部とはなりますが、それらが単独でIS0/TS16949の審査登録を受けることはできません。
また、IS0/TS16949:2002は、自動車業界サプライチェーンのどこに位置する組織に対しても適用することができます。

参考:IS0/TS16949:2002における『製造』及び『サイト』は次のように定義されています。
 ★製造:次に示すものを製作する、又はf士上げるプロセス
 @生産材料
 A生産、若しくはサービス部品
 B組立、又は
 C熱処理、溶接、塗装、めっき又は他の仕上げサービス
 ★サイト:価値を付加する製造工程のある事業所

注)IS0/TS16949:2002の登録認証範囲には、IS0/TS16949:2002登録認証の対象となる顧客に対して供給する全ての製品を含めなければなりません。(ただし、量産以前の新製品についてはこの限りではありません)
 
7) IS0/TS16949:1999については、2003年12月15日をもってIS09001:1994と共に失効となります。
ただし、2003年12月15日までにIS0/TS16949:1999認証取得された組織につきましては、最長2004年12月15日までIS0/TS16949:2002への移行延長が認められています。(詳しくは、IAOBホームページ:http://www.iaob.org/ 参照) 
 
3.ISO/TS16949:2002認証取得のメリット
  本規格の認証取得のメリットは以下に示す通りです。
1) 製品やプロセス品質が改善する
2) グローバルな部品外注に対する信頼性が拡大する
3) 品質改善のために組織資源の再配置ができる
4) 組織と供給者育成のために供給網の中で取られる共通の品質マネジメントシステムアプローチとして一貫性が保てる
 
4.登録認証取得条件
IS0/TS16949:2002では、登録申込時及び文書レビュー実施までに次の内容に関する情報の準備が必要です。
 
  1) 登録申込時に提出が必要な情報、以下の内容を含む情報ファイル
@ 従業員数、所在地
A 登録範囲
B 製品の設計責任の有無
C 登録対象の生産事業所(サイト)
D 支援事業所(リモートロケーション)
E 認証取得済み品質マネジメントシステム登録証コピー
F 顧客固有要求事項のリスト(顧客名、供給者コード、要求事項を記した文書名)
注)ISOTS16949:2002 登録認証の対象となる全ての顧客からの固有要求事項が必要です。要求事項を記した文書の写しも、可能な限り提出が必要です。
G 顧客より受けている組織に対する品質に関する特別通達の有無
H 顧客要求事項の細目と部署名のマトリクス表(一社一葉)
*特別状況である通達(GMによる“New Business Hold-Quality"、フオードによる“Q1Revocation"、ダイムラークライスラーによる“Needs Improvement"、など)を顧客より受けている組織に対しては、その状況が解除となった証拠が提示されるまで登録証の発行はできません。
 
  2) 文書レビューまでに準備が必要となる情報(文書レビュー時に提出する)
@ 品質マニュアル(受審する全サイト用)
A 組織のプロセス-順序及び相互作用を含む説明
B 内部監査の結果とアクションプラン(過去12ヶ月)
C マネジメントレビューの結果(過去12ヶ月)
D 資格認定された内部監査員のリスト
E 顧客からのパフォーマンス評価レポート
F 顧客からの苦情の状況
G 主要な指標の傾向(過去12ヶ月)
  
・顧客満足
  ・操業パフォーマンス
  ・供給者のパフォーマンス
  ・従業員の動機付けまたは意義
 
5.ISO/TS16949規格の内容と特徴
1) IS0/TS16949:2002は、IS09001:2000に追加して、自動車関係製品の設計・開発、生産、並びに該当する据付け及びサービスのための、品質マネジメントシステム要求事項を定めたものです。
 
2) 顧客指向プロセス(Customer Oriented Process)の重視
IS09001:2000の特徴として、プロセスアプローチの手法を推奨していますが、IS0/TS16949:2002では、「顧客(内部/外部)に製品またはサービスを提供するための価値を付加する活動」として、特に顧客に焦点を当てたプロセス(顧客指向プロセス)の重視をマネジメントシステムとして要求しています。
顧客指向プロセスの例としては以下が推奨されています:
 ・市場分析/顧客要求事項 ・入札/見積り ・注文/依頼 ・製品及びブロセスの設計
 ・製品及びプロセスの検証/妥当性確認 ・製品の生産 ・納品 ・支払い請求
 ・保証/サービス ・販売後/顧客フィードバック
また、自動車産業における品質マネジメントシステムは、以下の階層プロセスに分類されます。
 ・顧客指向ブロセス(COP):顧客が重点的に管理してもらいたいと考えているプロセス
 ・支援プロセス:顧客指向プロセスを構成している各段階(ステップ)の活動/プロセス
 ・マネジメントシステム:事業プロセスともいい、その組織特有のプロセスで、
  マネジメントとしてどのように意思決定するかに関するプロセス
  例:事業計画、資源の投入、コスト管理、環境管理など
従って、審査ではこれらの観点からプロセス審査が実施されます。
 
3) 自動車業界個別要求事項の大きな流れは、QS-9000と大きな違いはありません。すなわち、ベンチマーキングの奨励、事業計画書の重視、顧客満足の強調、品質マネジメントシステムの実績重視、継続的改善の奨励、特殊特性の指定、製品の実現プロセスの重視、部門横断チーム活動の奨励などが追加要求です。表-1に主要な追加要求事項を紹介します。
 
4) CIS0/TS16949:2002において適用除外が認められる項目は7.3項のみとなっています。しかし、製造の工程設計にも7.3項は適用され、これは除外することはできません。 

[表-1] IS0/TS16949:2002におけるQS-9000:1998に対する主要な追加要求事項
条項 要求項目 内容
4.1.1 一般要求事項-補足 アウトソースしたプ□セスに対する管理を確実にしても、すべての顧客要求事項を満たす責任を組織は免れることはできない
 
5.1.1 プロセスの効率 プロセスの有効性及ぴ効率を保証するために製品実現プロセス及び支援プロセスをレビューすること
 
5.4.1.1 品質目標-補足 品質目標及びその評価指標を定め・事業計画書に含め・品質方針を展開するために用いること
 
5.6.1.1 品質マネジメントシステムのパフォーマンス 品質目標の監視と、品質不良コストの定期報告及ぴ評価を行うこと
5.6.2.1 マネジメントレビューへのインプット-補足 顕在及び潜在の市場不具合、並びにそれらの品質、安全又は環境に対する影響の分析を含むこと
 
6.2.2.3 業務を通じた教育・訓練(0JT) 品質に影響する新規の業務又は変更された業務についてはすべて、要員への0JTによる教育・訓練を行うこと
 
6.2.2.4 従業員の動機付け及びエンパワーメント 従業員の動機付けのプロセスを持つこと
従業員が自らの活動の適切さ及び重要さを知っているか、品質目標の達成に貢献しているかを測定するプロセスを持つこと

 
7.1.1 製品実現の計画-補足 顧客要求事項及びその技術仕様書への引用は、品質計画書の一部として製品実現の計画に含めること
7.3.2.2 製造工程設計へのインプット 製品設計と同じく、インプット、アウトプット、検証などのステップを製造工程設計でも実施すること
7.3.3.2 製造工程設計からのアウトプット
7.3.4.1 監視 設計・開発の規定された段階での測定項目を定め、分析し、その要約した結果をマネジメントレビューへのインプットとして報告すること
 
7.4.1.2 供給者の品質マネジメントシステムの開発 顧客が他に規定しない場合、供給者は、認定された第三者審査登録機関によって、1S09001:2000の第三者審査登録を受けること
7.4.3.2 供給者の監視 供給者のパフォーマンスを納入された製品の品質など各種指標により監視すること
供給者が自ら製造工程のパフォーマンスを監視することを促進すること
 
7.5.1.8 サービスに関する顧客との合意契約 サービスに関する顧客との合意契約がある場合、サービスセンター、特殊治工具/測定装置、サービス要員などの有効性を検証すること
 
7.5.2.1 製造及びサービス提供に関するプロセスの妥当性確認-補足 要求事項7.5.2は、製造及ぴサービス提供に関するすべてのプロセスに適用すること
 
7.5.5.1 保管及び在庫管理 旧式となった製品は、不適合製品と同様な方法で管理すること
 
7.6.3.2 外部試験所 当該装置の校正サービスに資格のある試験所を利用できない場合は、装置製造業者が実施してもよいが7.6.3.1に列挙した内部試験所に対する要求事項を満たすことを確実にすることが望ましい
 
8.2.1.1 顧客満足-補足 実現プ□セスのパフォーマンスの継続的評価を通じて、組織の顧客満足を監視すること
製造工程のパフォーマンスを監視すること
 
8.2.2.2 製造工程監査 製造工程の有効性を判定するために、個々の製造工程を監査すること
 
8.2.2.3 製品監査 生産及び引渡しの適切な段階で、定められた頻度によって製品を監査すること
 
8.2.2.5 内部監査員の資格認定 IS0/TS16949:2002の要求事項を監査する資格を付与された内部監査員を持つこと
 
8.2.3.1 製造工程の監視及び測定 新しい製造工程に関して、工程調査を実施すること
 
8.3.3 顧客情報 不適合製品が出荷された場合には、顧客に対して速やかに通知すること
 
8.5.1.1 組織の継続的改善 継続的改善のためにプロセスを定めること (lS09004:2000、附属書8参照) 
参考資料 「ISO/TS16949:2009規格要求事項解説」、「ISO TS16949-2009の取得」、「What is ISO/TS 16949:2009?
IATFは http://www.iatfglobaloversight.org/参照
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