女性校長・学校改革1000日 山廣康子著   HOME 技術資料室 技術用語
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 広島・安佐南区にある安西高校は荒れた高校だった。男子生徒は、私服で登校、女子生徒は極端に短いスカートに化粧、さらに鞄を持たずに携帯電話だけを持って登校する者もいた。そして、学校には暴走族がバイクでやってきて校庭を走り回った。いじめやリンチは日常だった。 そんな学校に2001年4月、山廣康子という教師が教頭として赴任した。

           ―以下、本文から―

 私は、赴任した当初から学校の汚さに辟易していた。学校が荒れているせいなのか、だれも校内を清掃しない。ゴミは散らかり放題。生徒はもちろん、教師たちも積極的に掃除をしようとしない。これには呆れ、驚くばかりだった。やりがいのある職場だったら、きれいにするはず。整理・整頓することなく、仕事がはかどるはずがない。学校が荒れているから汚いのか、汚いから学校が荒れるのか・・・。荒れた校舎の光景が、教師や生徒の心象風景であるかのように感じた。

 赴任して一番最初にしたことが、雑然としていて、ホコリ高い職員室だった。思い起こせば、学校改革の最初の一歩は、この職員室の清掃だったのかもしれない。 同時に私は、校内の清掃にも取り掛かった。「掃除をしなさい」と言葉で言っても、だれも聞く耳を持たないので、まずは自ら行動で示そうと思ったのである。

 そのころ「掃除に学ぶ会」と出合った。これは1993年にイエローハットの創業者である鍵山秀三郎氏が始めたもので「トイレを磨いて心を磨こう」を合言葉に、全国の学校や駅などのトイレを掃除する一種のボランティア団体である。 この活動を学校でやると、学校がきれいになるだけでなく、生徒達の心や生活態度までが穏やかになり、学校の雰囲気がよくなる。さらに、その学校のある地区全体までが明るくなるという経験をしてきたという。

 トイレ掃除の決行日は、3ヶ月後の12月16日と決まった。当日はたくさんの生徒を動員しようと、生徒の自宅に個別に電話をかけた。来るかどうか心配だった問題行動を起こした生徒達も、一応登校してきた。多くの生徒が、最初は便器に触れることに不快感を示したり、やる気がなさそうな態度を示していたが、時間が経つにつれて、真剣になり、最後は全員で便器磨きに没頭していた。

 トイレ掃除は思惑以上に大成功だった。私にとって、生徒達が熱心に取り組んでいる姿は意外だったし、正直生徒達がここまでやるとは思っていなかった。 このトイレ掃除で得られるのは、ただトイレをきれいにした、という充実感だけではない。皆で一つの目的に向かうことで生まれる共有体験も得られるのだ。

 トイレ掃除を機に、学校全体の空気が、少しずつ変わりだしてゆく気配があった。自分達の学校は自分達の手できれいにしようという意識が芽生えてきたようだった。
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