有限要素法 (Finite Element Method:FEM)   HOME 技術資料室 技術用語
==========================================
 飛行機・自動車・鉄道車両・鉄骨製橋梁・重量物の吊具など、破損すると人命にかかわる重大事故につながる設備の設計に当たっては、各部材にどのような応力が発生するかを正確に把握して、金属疲労を見込んだ強度設計をすることが必須です。
 
 それには、まずこれらの構造物の各部に発生する応力分布を精度良く把握することが必要ですが、旧来の材料力学では、モデル化した近似解析しかできず、精度は余り良くありませんでした。
 
 1950年代にアメリカボーイング社が当時多発した飛行機事故を未然に防ぐために、飛行機の設計精度を上げるべく開発したのが有限要素法:FEM(Finite Element Method) という応力分布の解析技術で、これにより設計精度は飛躍的に向上しました。

 これには膨大な演算を必要とするため、当初は大型コンピューターを持った団体や企業でしか使われませんでしたが、その後のパソコンの発達によって一気に広く一般に普及し、現在ではFEMは飛行機や自動車、建築などの大きなものから小さなネジの設計まで広く一般に使われています。

1.有限要素法の考え方 
 複雑な形状や性質を持つ物体を単純な形状の小部分(要素)に分割し、各要素内及び要素間の変形関係を数式化した多次元方程式を作ります。
 これらの多次元連立方程式をコンピューターにいれ、与えられた外力の大きさと位置から、各要素に発生する応力と変形量を計算で求めることによって、全体の応力分布や変形の仕方等を予測する技術です。

 それぞれの微小要素に発生する応力から全体の応力分布がわかり、最大応力値とその場所がわかります。

2.具体的な作業例(自動車部品の場合)
      

3.Cフックへの適用例
 有限要素法 (FEM) による解析を行うためにコンピューターに入力した形状と、要素分割図を右図に示します。
 20 ton のコイルを吊ったときに発生する応力分布は下図のようになり、最大応力は上下コーナー部内側で 21.5 kgf /mm2 の応力が発生することがわかります。
 金属疲労が進んで材料の強度がこれ以下に下がると、この部分が起点となって亀裂が発生する危険性を示しています。
    ←最大応力
==========================================
HOME 技術資料室 技術用語 吊具