段積みコイルに掛かる荷重    HOME 技術資料室 技術用語
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 原コイルヤードなどでコイルの積み段数が多くなってくると、床面は基より、最下段のコイル及びそのスキッドに掛る力もかなり大きくなるため、充分な強度を持たせた構造設計をする必要があります。
尚、コイルヤードの床に掛かる垂直荷重に関しては「コイルヤード」参照

1.段積コイルに掛る荷重
 コイルを段積みした場合に発生する力は図-1 に示すように上段に乗ったコイルの重量が下段コイルの接触部に掛かりますが、その値は上段コイルの重量の接触部の方向への分力になります。
 コイル径及び重量が全て同一というモデルケースの場合、コイルの接点は正三角形上に来るので、上段コイルが下段コイルに掛る力 f は、図-2 のように平行四辺形の定理から下式で求められます。

 f=(W/2)/cos30=0.58×W・・・・(式-1)
 W=10 ton の場合は f=5.8 ton になります。

 この力が全てのコイルに発生し、図-3 のように下段コイルに次々と累積して行きます。 

      
 この力 F は斜め下方向の力なので、図-4 に示すように、水平方向の力 Fh と垂直方向の力 Fv に分解する必要があります。垂直方向の力 Fv はスキッドを経て床面が受けてくれる力ですが、水平方向の力 Fh はコイルスキッド自身で受け止める必要があります。それぞれ下式で求められます。
    Fv=F×sin60°=F×0.87・・・・・・・・(式-2)
    Fh=F×cos60°=F×0.5・・・・・・・・・・(式-3)
 更に、コイルスキッドと直下部の床面との間には垂直力 Fv による摩擦力 Fz が発生し、摩擦係数を μ とすると下式で求められ、Fh と逆方向に働きます。
    Fz=μ×Fv =μ×F×sin60・・・・・・(式-4)
従って水平方向の力は
    Fh−Fz=F×(cos60°−μ×sin60°)・・・・・・(式-5)
となります。

2.コイルスキッドに掛る荷重
  以上を元にコイルスキッド各部に掛る荷重を計算すると以下のようになります。
(1)垂直方向に掛る力
 垂直方向の力はお互いに独立なので、最大の力が掛る部分で見ておけば充分です。図-5 から 3×f が最大値なので、最大の垂直荷重は下式で求められます。
    3×f×sin60°=3×0.58×W×0.87=1.51×W・・・・・・・(式-6)
    W=10 ton の場合は、1.51×10 ton=15.1 ton になります。
スキッド各部の垂直方向への強度は最大 15.1 ton の荷重に耐える強度が必要です。
尚、コイルヤードの床に掛かる垂直荷重に関しては「コイルヤード」参照

(2)水平方向に掛かる力
 コイルスキッドの各部分によって発生する力が異なり、しかもこれらが合成されて各スキッドに力が掛るため、部分ごとに検討が必要です。各部について式-5 に従って 10 ton コイルの場合を計計算すると下記の荷重が計算できます。
f=5.8 ton なので、床とベースプレート間の摩擦係数を μ=0.1 と仮定すると、式-5 から
 1×f の場合、Fh−Fz=5.8×(0.5−0.1×0.87)=2.4 ton
 2×f の場合、Fh−Fz=2.4×2=4.8 ton
 3×f の場合、Fh−Fz=2.4×3=7.2 ton
となります。
隣同士の水平方向の荷重を加減算してゆくと図-5 のようになり、最大で14.4 ton の水平方向の力が生じます。
    
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