ボルト・ナット HOME 技術資料室 技術用語 ========================================= ボルトとナットは構造物を固定又は結合するためのものですが、永久に固定できる性質のものではありません。これが緩んで脱落すると部位によっては重大災害につながる危険があります。 1.ボルト・ナットの緩み 動く構造物の組み立てに使用されるボルト・ナットは震動や繰り返し荷重が加わることによって、いずれ緩むことを前提に対策しておくことが必要です。例えばクレーンの場合は「クレーン構造規格」により、緩み止めが義務つけられています。 第52条(緩み止め) ボルト、ナット、ねじ等には、緩み止め又は抜け止めを施さなければならない。ただし、高張力ボルトを用いて接合する場合には、この限りでない。 2.緩みの原因 (1)回転によらない緩み 1)初期ゆるみ 表面粗さ等の微小な凹凸が締結後に時間経過や外力によりへたった場合ゆるむ。 2)陥没ゆるみ 接触部の面圧が高すぎ、接触部表面が塑性変形してゆるむ。 3)微動摩耗によるゆるみ 接触部の内、特に被締付物の接合面が外力によってすべり、摩耗を生じてゆるむ。 4)密封材の永久変形によるゆるみ ガスケット等の異種材料の密封材が用いられる場合、そのへたりによってゆるむ。 5)過大外力によるゆるみ 被締付物の面圧による陥没以外で過大な外力によりボルト自体の塑性伸び進行によりゆるむ。 6)熱的原因によるゆるみ 温度変化によりボルト軸力の変化が発生し高温でボルトが伸びた場合軸力が低下しゆるむ。 (2)回転による緩み 1)軸回り方向繰返し外力によるゆるみ ボルト軸線回りのモーメントが被締付物に作用し接触部が滑り、その上のナット又はボルト頭座部でも滑りが生じる場合に、ナット又はボルトが戻り回転してゆるむ。 2)軸直角方向繰返し外力によるゆるみ ボルト軸線直角方向の外力が繰返し作用する場合に接触部が滑り、ナット又はボルト戻り回転してゆるむ。 3)軸方向繰返し外力によるゆるみ ボルト軸線方向の外力が繰返し作用する場合、準静的である場合と衝撃的である場合の両方でゆるむ。 3.緩みの対策 (1) 二重ナット 右図に示すように、2つのナットを互いに締め合うことでねじは緩みにくくなります。このような方法を二重ナットあるいはロックナット、ダブルナットなどと呼んでいます。 二重ナットを更に強化したものとして下記(3) d に示すハードロックナットがあります。 |
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(2) 座金(ワッシャー) 右図に示したばね座金(スプリングワッシャ)を使用すると多少ねじは緩みにくくなります。 また、アルミニウム合金などの比較的軟らかい材料を結合させる場合は、繰り返し荷重が加わると材料自身が塑性変形し、ねじが緩んでしまう危険があります。そのような場合は平座金を使うことで、材料にかかる部分的な圧力を低減させ、塑性変形量を減らすことはできますが、万全の対策にはなりません。 (3) 特殊構造 ボルトにピンを通したり、あるいは特殊な座金を利用することで、ねじを緩みにくくすることができます。また、下図に示すような緩み止め効果を高めたねじ部品が、多くのねじメーカーから販売されています。
右写真の場合は、脱落防止にピン穴を利用した例です。最悪でもナットの脱落による危険は防止するという方法です。 ボルトにピン穴をあけるということで融通性がなく加工コストが高くボルトに傷をつけることにもなります。最近では緩み止めナットが各種あるのであまり利用されていません。 ボルト頭横に止め穴を開けて、針金を通して緩み止めにする方法もあります。これも穴あけにコストがかかります。ボルトとナットの組み合わせの場合は利用されません。ボルトが一箇所の場合は頭部穴に通した針金を別部位の穴等に引っ掛けます。ボルトが複数ある場合は、ボルト間で針金を通して緩み止めとします。ナットと組み合わせる場合は、ピン穴のようにねじ部でも有効です。 |
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(5) ねじロック材 ねじを緩みにくくする方法の一つとして、ねじロック材と呼ばれる接着剤を使用することもあります。(日本ロックタイト) |
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(6)FEM解析による効果比較 (東京大学工学部機械工学科 泉 聡志氏)
4.ネジの寸法(JIS) ========================================= HOME 技術資料室 |