アルミニウム (Aluminum) JIS H4000       HOME 技術資料室 技術用語
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 軽くて電気を通しやすいアルミニウムは電機部門や航空機機体、自動車のエンジンなどに広く使われています。価格がやや高いことと、鉄などとの接合部に電蝕が起きないような工夫が必要になります。

1.アルミの性質(鋼板との比較)
物性
単位
密度
g/cm3
融点
ヤング率
N/mm2
線膨張係数
×10-6
熱伝導率
w/(m・℃)
電気伝導率
% IACS
磁性
アルミ 2.70 660 6.86×104 24.1 220 65 非磁性
鋼板 7.85 1,536 20.6×104 11.7 71 17 磁性

2.アルミの種類と特性

合金系統 合金呼称 材料特性の概要 用途例
JIS A.A
純アルミニウム系 1060 1060 導電材で61%IACS保証。強度を必要とするときは6101を使用 ブスバー、電線
1085 1085 成形性、表面処理性が優れ、(曲げ加工には最適)耐食性はアルミニウム合金中最良である。強度は、純アルミニウムであるため低く、純度が高くなるにつれて低くなる 日用品、銘板、照明器具、反射板、装飾品、化学工業タンク類、、溶接線、導電材、はく地
アルミ缶ボディ
1080 1080
1070 1070
1050 1050
1N30
1100 1100 Al純度が99.0%以上の一般用途のアルミニウム。陽極酸化処理後の外観が、やや白っぽくなる以外は上記と同じ 一般器物、キャップ、印刷板、建材、熱交換器部品
1200 1200
1N00 1100に比べて若干強度が高く、成形性も優れる。その他の特性は1100と同じ 日用品
Al-Cu系 2011 2011 快削合金。切削性が優れ、強度も高いが、耐食性が劣る。耐食性が要求される場合には、6262系合金を使用 ボリューム軸、化学部品、ねじ類
2014 2014 Cuを多く含むため、耐食性はよくないが、強度が高く、構造用材として使用される。鍛造品にも適用される 航空機、ギャー、油圧部品、ハブ
2017 2017
2024 2024
2117 2117 溶体化処理後かしめを行うリベット用材として常温時効速度を遅くした合金 リベット
2018 2018 鍛造用合金。鍛造性に優れ、高温強度が高いので、耐熱性が要求される鍛造品に使用される。耐食性は劣る シリンダーヘッド、ピストン、VTRシリンダー
2218 2218
2618 2618 鍛造用合金。高温強度に優れるが、耐食性は劣る ピストン、ゴム成形用金型、一般耐熱用途部品
2219 2219 強度が高く低温および高温特性が優れ、溶接性も優れるが耐食性は劣る 低温用タンク、航空宇宙機器
2025 2025 鍛造用合金。鍛造性良好で強度は高いが、耐食性は劣る プロペラ、磁気ドラム
2N01 鍛造用合金。耐熱性があり、強度も高いが、耐食性は劣る 航空機エンジン、油圧部品
Al-Mn系 3003 3003 1100より強度が約10%高く、成形性、溶接性、耐食性に優れている 一般器物、フィン、化粧板、複写機ドラム、船舶用材
3203
3004 3004 3003より強度が高く、成形性に優れ、耐食性も良好 アルミ缶ボディ、電球口金、屋根板、カラーアルミ
3104 3104
3005 3005 3003に比べて強度が約20%高く、耐食性も比較的良好 建材、カラーアルミ
3105 3105 3003に比べ若干強度が高く、その他の特性は3004に類似 建材、カラーアルミ、キャップ
Al-Si系 4032 4032 耐熱性、耐摩耗性に優れ、熱膨張係数が小さい ピストン、シリンダーヘッド
4043 4043 湯流れよく、凝固収縮が少ない。硫酸陽極酸化処理により灰色に自然発色する 溶接線、建築パネル、ブレージング皮
Al-Mg系 5005 5005 3003と同程度の強度があり、加工性、溶接性、耐食性がよい。陽極酸化後の仕上りが良好で、6063形材とよくカラーマッチする 建築用内外装、車輌の内装、船舶の内装
5050
5052 5052 中程度の強度をもった最も代表的な合金で、耐食性、溶接性、成形性がよい。特に強度のわりに疲労強度が高く、耐海水性が優れている 一般板金、船舶、車輌、建築、缶エンド、ハニカムコア
5652 5652 5052の不純物元素を規制して過酸化水素の分解を抑制した合金で、その他の特性は5052と同等 過酸化水素容器
5154 5154 5052より強度が約20%高い。その他の特性は5052と同様 5052と同様、圧力容器
5254 5254 5154の不純物元素を規制して、過酸化水素の分解を抑制した合金で、その他の特性は5154と同等 過酸化水素容器
5454 5454 5052に比べ強度が約20%高い。5154とほぼ同等の特性を示すが、厳しい環境での耐食性は5154より優れている 自動車用ホイール
5056 5056 耐食性に優れ、切削加工による表面仕上り、陽極酸化処理性とその染色性に優れている カメラ鏡胴、通信機器部品、ファスナー
5082 5082 5083に近い強度をもち、成形性、耐食性に優れている 缶エンド
5182 5182 5082に比べて、約5%強度が高く、その他の特性は5082と同等 缶エンド
5083 5083 溶接構造用合金。実用非熱処理合金の中で最も強度の高い耐食合金で溶接構造に適する。耐海水性、低温特性も優れている 船舶、車輌、低温用タンク、圧力容器
5086 5086 5154より強度が高く、耐海水性の優れた非熱処理系溶接構造用合金 船舶、圧力容器、磁気ディスク
5N01 強度は3003と同等であるが、光輝処理後の陽極酸化処理で高い光輝性が得られる。成形性、耐食性も良好 台所用、カメラ、装飾品、銘板
5N02 リベット用合金。耐海水性良好 リベット
Al-Mg-Si系 6061 6061 熱処理型の耐食性合金。T6処理によりかなり高い耐力値が得られるが、溶接継手強度が低くなるためボルト、リベット構造用に使用されています。 船舶、車輌、陸上構造物
6N01 中強度の押出用合金。6061と6063の中間の強度を有し、押出性、プレス焼入製とも優れ、複雑な形状の大型薄肉形材が得られる。耐食性、溶接性も良好 車輌、陸上構造物、船舶
6063 6063 代表的な押出用合金。6061より強度は低いが、押出性に優れ、複雑な断面形状の形材が得られ、耐食性、表面処理性も良好 建築、ガードレール、高欄、車輌、家具、家電製品、装飾品
6101 6101 高強度導電用材。55% ACS保証 ブスバー、電線
6151 6151 特に鍛造加工が優れ、耐食性、表面処理性もよく複雑な鍛造品に適している 機械、自動車部品
6262 耐食性快削合金。2011に比し耐食性、表面処理性が一段と優れ、6061と同等の強度を有する カメラ鏡胴、気化器部品、ブレーキ部品、ガス器具部品
Al-Zn-Mg系 7072 7072 電極電位が低く、防食的クラッド皮材として主用されるが、犠牲陽極作用を利用して熱交換器フィンにも適用される アルミニウム合金の合せ材の皮材、フィン
7075 7075 アルミニウム合金の中最高の強度を有する合金の一つであるが、耐食性は劣る。7072とのクラッドにより耐食性は改善されるがコストが高い 航空機、スキーストック
7050 7050 7075の焼入れ性を改善した合金で耐応力腐食割れ性に優れる。厚板、鍛造品に適している 航空機、高速回転体
7N01 溶接構造用合金。強度が高く、しかも溶接部の強度が常温放置により、母材強度に近いところまで回復する。耐食性もかなり良好 車輌、その他の陸上構造物、航空機
7003 7003 溶接構造用押出合金。7N01より強度は若干低いが、押出性がよく、薄肉の大型形材が得られる。その他の特性は7N01とほぼ同様 車輌、オートバイ
(参考)機械的性質(新日鉄自動車用アルミ合金FORMEXの例)
合金系 規格略号
質別
YS(耐力)
N/mm2
TS
N/mm2
El% n値 r値 Er 特徴
成形性 耐SCC 耐BS
5000系 FORMEX TG40-O 132 260 30 0.30 0.87 9.5
TG43-O 125 270 28 0.30 0.80 9.9
TG06-O 135 281 31 0.32 0.66 10.0
TG19-O 127 267 31 0.32 0.71 10.0
TG25-O 117 274 35 0.36 0.73 10.3
TG36-O 120 291 35 0.35 0.90 10.3
一般材 A5052P-O 101 212 24 0.31 0.70 9.8
A5182P-O 148 296 24 0.34 0.76 9.5
6000系 FORMEX TM21-T4 121 245 31 0.29 0.73 9.9
TM30-T4 110 214 29 0.24 0.73 9.9
一般材 6016-T4 110 210 27 0.26 0.70 9.3
 
 [注] BS:Bake Softening(焼付軟化)
     SCC:Stress Corrosion Cracking(応力腐食割れ)

3. アルミのコーティング(表面被覆)
 アルミニウム本体 (Bare Al) に色々な皮膜をコーティングして、潤滑性・耐指紋・耐白錆・絶縁性・導電性等を改善する製品が出ています。下表は住友軽金属と神戸製鋼の例です。
 
住友軽金属の例)
用途
基本樹脂 LC003
エポキシ
LC005
エポキシ
LC008
ポリエステル
LC011
アクリル/ウレタン
 
標準膜厚(μm) 2 2 10 2  
摩擦係数 0.06 0.06 0.04 0.04 バウデン摩擦係数
塗膜硬度 3H 3H 3H 3H 鉛筆硬度(破壊)
塗膜密着性試験 100/100 100/100 100/100 100/100 碁盤目テープ試験
耐食性 良好 良好 良好 良好 塩水噴霧720H
耐酸性 良好 良好 良好 良好 5%硫酸、室温、24H
耐指紋性 良好 良好 良好 良好 ポワイトワセリン使用
  屋内・クリア 屋内・クリア 屋外・ソリッド 屋内・クリア  
 
神戸製鋼の例)


4.アルミの加工
1)母材コイルの種類と製品
  @)圧延油が付着した母材コイル→圧延油が付着したままで出荷する製品(一般材)
              └→圧延油を洗浄除去して出荷する製品(顧客の指定)
A)塗装した母材コイル────→塗装製品として出荷する製品(家電向けに多い)
 
2)圧延油が付着した母材コイルの加工
冷間圧延時に使用する圧延油と圧延中に発生するアルミの微粉末が混ざって板上に付着している。海外にコイルを輸送する場合には、この圧延油がアブレージョン対策として必須。このコイルを加工するに当たっては顧客の要請に応じて下記の2通りの場合がある。
(1) 圧延油を付けたままの製品として出荷する場合
@ なるべく板表面の圧延油を落とさずにそっと通板・加工する事がポイント
A レベラーロールにアルミ粉がビルドアップするため、各ロールを常に洗浄油で濡らしておく必要があると同時に、数コイル毎にラインを清掃する必要がある。洗浄油の排気装置が必要な場合もある。
B アルミを通板した後は圧延油及びアルミ粉がライン各部に付着するため、普通鋼を通板する前にラインの清掃が必要となる。
(2) 圧延油を除去して製品にする場合
@ 加工ライン内に洗浄装置が必要
A 洗浄装置本体は上下1対のブラシロール及び入出側に各1対のピンチロールを備えた一般的なもので可
B 但し、石油系の圧延油を除去するための溶剤は引火性があるため、排気装置及び防火対策が必要
C 更に洗浄剤のヒューム対策及び外部から異物の侵入防止のため、周囲をビニールで囲う必要あり
 
3)塗装した母材コイルの加工
カラー鋼板(塗装鋼板)と同等の設備及び作業が必要

4)加工に関する共通課題
(1) 異物侵入対策として、ライン全体をビニールなどで囲う必要がある
(2) 加工ラインでは極力製品に接触する部分を少なくする
(3) ロールは回転を軽くするためにGD2を小さくしてゴムライニングする
(4) テーブル類はベークライトもしくはカーペット張りとする
(5) スリッターラインのテンション装置はゴムのブライドルロールが主で一部カーペットによるパッドも使われる
(6) スリッターの板押さえはフィンガータイプを使用
(7) 普通鋼の防錆油は多少付着しても問題無いが、鉄粉の付着は不可
(8) 切断破面は90%以上が剪断破面でクリアランスはかなり小さくする必要がある
(9) 丸刃はハイス系が多く使われている。薄物になると切れ味から超硬刃が使われる。SKDでも切れないことはないが、破面性状や耐久性から確認して行く必要がある。HESを使っているところが多い。
(10) 切板ラインのパイラーはエアーブローとクッション付きエンドストッパーのみの一般的なもので可
 
5)梱包荷姿
(1) 母材コイルは穴縦のみ、製品は顧客の指定により縦・横両方ある
(2) 母材コイル・製品共、木製スキッド付きが標準
(3) 国内向けの製品はビニール外装、輸出向け製品はハードボード外装が一般的
(4) コイルは母材・製品共、全て内径スリーブ(鋼管又は紙管)が必要。アルミは腰が弱いためスリーブが無いと内径部が巻緩む
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